賃貸物件で仲介手数料無料になるからくりと注意点を解説

公開:2023/04/24
更新:2023/11/02
賃貸物件で仲介手数料無料になるからくりと注意点を解説
仲介手数料無料の賃貸物件はどのようなからくりになっているのか気になっていませんか。この記事ではなぜ仲介手数料を無料にできるのか、どのような意図があって無料にしているのかを物件選びの注意点と合わせて解説します。

賃貸物件の仲介手数料の基本的な仕組み

説明を受けている人

賃貸物件で仲介手数料無料の物件があるのはなぜかを考える上でまず、仲介手数料の基本的な仕組みを理解することが重要です。仲介手数料は必要なものと考えているかもしれませんが、必ずしも払わなければならない費用ではありません。仲介手数料について押さえておきたいのは以下の4つのポイントです。

仲介手数料は不動産会社への報酬に当たる

仲介手数料とはそもそも賃貸物件の仲介をしてくれた不動産会社への報酬です。賃貸契約をして入居するためには物件の紹介を受けて比較検討をしたり、内覧をしたりする必要があるでしょう。賃貸契約の重要事項説明を受けて、契約書を取り交わす手続きも不可欠です。このような賃貸選びのサポートや契約にかかわる一連の手続きの代行をしているのが不動産会社です。業務に対する報酬として、不動産会社は法律によって対価を請求する権利を認められています。

宅地建物取引業法による制限がある

不動産仲介業務の仲介手数料について定めている法律は宅地建物取引業法です。宅地建物取引業法では不動産会社が仲介をしたときに仲介手数料を請求できることが定められていますが、仲介手数料の金額や請求方法についても規定しています。不動産会社は仲介をしたら無制限に仲介手数料を請求できるわけではありません。法律によって上限額が賃貸契約書に定められている家賃の1.1ヶ月分(家賃1ヶ月分とその税金0.1ヶ月分)とされています。また、原則として賃貸物件のオーナーと借主の両方から家賃0.55ヶ月分ずつ請求することが定められています。ただし、承諾を得れば不動産会社は借主に1ヶ月分の家賃に相当する仲介手数料を請求することも可能です。総額が上限額に到達していない限りは違法にはなりません。

仲介手数料は上限があるだけで下限はない

仲介手数料は上限額が定められていますが、下限額については定めがありません。したがって、不動産会社は仲介業務をしたときにオーナーにも借主にも仲介手数料を請求しないことも可能です。また、オーナーに家賃0.55ヶ月分、借主に0.55ヶ月分請求するのが原則ですが、オーナーに家賃0.55ヶ月分を請求して借主には請求しないこともできます。

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仲介手数料を受け取らないと不動産会社は取引利益がない

法律上は仲介手数料に下限はありませんが、不動産会社としては仲介手数料を請求しないと取引利益を得ることができません。仲介業務に対する報酬として位置付けられている仲介手数料を放棄してしまうと、人件費や通信費などの負担によって赤字になってしまいます。他の形で収益を得ることができれば問題ありませんが、不動産会社としては利益を増やさなければならないので通常は総額で家賃1.1ヶ月分の仲介手数料を請求しています。

賃貸物件が仲介手数料無料になるからくり

虫眼鏡とマンションの模型

仲介手数料の仕組みがわかったところで、賃貸物件で仲介手数料無料にできるからくりを見ていきましょう。不動産会社としては仲介手数料無料にすると利益を失うリスクがあります。しかし、きちんと利益を上げながらも借主から仲介手数料を取らないことが可能です。ここでは典型的なからくりを3つ紹介します。

賃貸物件のオーナーに請求している

賃貸物件の仲介をしたときに不動産会社はオーナーと借主に仲介手数料を請求できます。原則は家賃0.5ヶ月分ずつの請求が上限ですが、オーナーが承諾すればオーナーに家賃1ヶ月分を請求することが可能です。ずっと空室になっていて早く入居者を見つけたいとオーナーが思っているときには対策が必要です。仲介手数料無料にすれば入居者が集まりやすいと考えられるので、不動産会社からのオファーを受けたり、オーナー自ら提案したりして無料にしています。不動産会社としては借主から仲介手数料をもらわなければならない理由はまったくありません。仲介手数料には上限があるので、全額をオーナーが払ってくれるなら不動産会社としては喜んで仲介手数料無料で対応できます。

不動産会社間での取引をしている

不動産会社があえて仲介手数料無料にしているケースも稀ではありません。賃貸物件はオーナーが特定の不動産会社に専任媒介契約をしていることがあります。専任媒介契約の場合には依頼された不動産会社だけが仲介することが可能です。ただ、実際には不動産会社間で取引がよくおこなわれています。A社が専任媒介契約をしたときに、B社が借主を見つけたら、A社がB社に業務委託をして契約業務を代行してもらうというやり方です。このような仕組みにするとB社は業務委託による対価を得られます。B社としては業務委託費で利益を得られるので仲介手数料無料でも良いと判断することがあります。

実績を上げるための戦略にしている

賃貸物件のオーナーが一般媒介契約で不動産会社と契約しているときにも、不動産会社があえて仲介手数料無料にしていることがあります。一般媒介契約の場合には、オーナーが複数の不動産会社と契約しているのが一般的です。そのため、競合他社に先に仲介を成立されてしまって、自社は利益を得られない可能性があります。他社と比較して自社を選んでもらえるようにするために、借主になるユーザーへメリットを示すのは重要でしょう。仲介手数料が家賃1ヶ月分かかる不動産会社と仲介手数料無料の不動産会社では無料の方が良いと考えるのが当然です。

原則はオーナーに家賃0.55ヶ月分の仲介手数料を請求できるので、借主から仲介手数料を受け取らなかったとしても収入がゼロになるわけではありません。特に実績を上げたいと考えている不動産会社ではこのような戦略を立てて仲介手数料無料にしている場合が多いです。

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仲介手数料無料の賃貸物件の注意点

注意点

仲介手数料無料で契約できる賃貸物件は初期費用を抑えられるメリットがあります。からくりがわかると仲介手数料無料の賃貸物件の方が良いのではないかと思った人もいれば、避けた方が良さそうだと感じた人もいるでしょう。ここでは、仲介手数料無料の賃貸物件の注意点を解説します。

入居者がいない不人気な賃貸物件が多い

仲介手数料無料の賃貸物件は不人気な物件の場合があるので注意が必要です。オーナーが空室対策として仲介手数料を全額負担することに決めたというケースです。入居者がいない物件には何か理由があると考えた方が良いでしょう。立地が悪い、部屋が狭い、築年数が古いといった理由などが考えられますが、いわく付き物件のこともあります。また、物件の内部だけでなく、周辺環境についてもチェックしましょう。駅が遠い、近くにスーパーやコンビニがない、工場があって騒音や振動があるといった理由で住みづらい場合があります。ただ、不人気でも自分に合う物件ならまったく問題はないので、精査して魅力のある物件かどうかを検討するのがおすすめです。

礼金に上乗せをしていることがある

仲介手数料無料の賃貸物件は初期費用が実は高いこともあるので気をつけましょう。オーナーが仲介手数料を全額負担するとオーナーとしては賃貸経営における利益が減ることになります。その分を礼金に上乗せしていることもあります。例えば、礼金を家賃1ヶ月分にするとオーナーは受け取った礼金をそのまま仲介手数料の支払いに充てることが可能です。不動産会社が全物件を仲介手数料無料にするといったやり方をしている場合にはよくあるからくりで、もともと礼金が家賃1ヶ月分だったのを2ヶ月分にしていることがあります。礼金だけでなく敷金も上げていることもあるので注意しましょう。

入居のときにかかる手数料が高い場合がある

仲介手数料がかからない代わりに、消毒費用、鍵交換代、事務手数料といった別の手数料が請求されることもあります。本来は消毒によるクリーニングや鍵交換にかかる費用はオーナーが負担するものです。しかし、賃貸業界では借主に請求するケースが多くなっています。ただ、それぞれ1万円以上の費用がかかることが多いので、交渉して無料にしてもらうのが合理的です。事務手数料も法律による定めを考慮すると仲介手数料に含まれていると解釈できます。指摘をすれば無料にしてくれる可能性は十分にあるので、余計な手数料を支払わずに済むように交渉してから契約しましょう。

まとめ

賃貸物件の仲介手数料無料のからくりを理解して物件を選ぼう

賃貸物件で仲介手数料無料の場合にはオーナーが支払っている場合がほとんどです。借り手がいない不人気な物件の可能性や、他の手数料が高くなっている場合があるので慎重に物件を精査しましょう。他の人が気に入らなくても自分に合う賃貸物件なら問題ありません。仲介手数料無料なら初期費用を抑えられるのは確かなので、前向きに検討しましょう。

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この記事を監修した人
三宅 隆弥
OHEYAGO宅建士 チーフ
三宅 隆弥
賃貸仲介業に5年従事。2020年よりイタンジ株式会社にてお部屋探し、内見予約、入居のお申し込み・契約までスマホ1つで完結する新しい形の不動産賃貸サイト「OHEYAGO」でCSを担当。資格は宅地建物取引士を保持。
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