賃貸借契約って何?賃貸物件契約の基礎知識
賃貸借契約とは
不動産の賃貸借契約において、物件を貸す人を「貸主」または「賃貸人」、物件を借りる人を「借主」または「賃借人」と呼びます。賃貸借契約という言葉はあまり聞きなれないかもしれません。
しかし、内容は決して難しいものではなく、簡単に言えば「貸主が所有する部屋を借主に使用収益させること」と「借主が貸主に賃料を支払うこと」の2つを双方が合意することを意味します。それに伴って決められる諸条件を記載したものが賃貸借契約書です。
関連記事:法律の専門家が教える、賃貸借契約書のここを見るべし3つのポイント
賃貸借契約に関連する法律
賃貸借契約に関連する主な法律は、「民法」と「借地借家法」です。
賃貸借、つまり物件の貸し借りについての基本的な考え方は民法に則っています。またトラブルが発生した際、特段決めごとがない場合は、民法に基づいて解決します。
契約は本来、平等の関係の上に成り立つべきです。しかし、大家さんや不動産屋さんと借主である一般消費者では、その経験や知識、情報量に大きな差があります。この格差をなくし、借主が契約で不利な立場にならないよう、借主保護の観点で施行されたのが借地借家法です。そのため賃貸借契約においては、借地借家法が民法の規定よりも優先して適用されます。
普通借家契約と定期借家契約の違い
賃貸借契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」があります。そもそも「賃貸借契約に種類があることを知らなかった」という人も多いかもしれません。しかしこれらは、更新の有無や中途解約の可否という点で性質が大きく異なります。契約後に「こんなはずじゃなかった」とならないように注意しましょう。
普通借家契約
賃貸に出されているほとんどが普通借家契約の物件です。普通借家契約の特徴として、「更新が可能である」
「貸主から解約を申し入れる際は正当事由が必要である」「正当事由がない場合、貸主は更新拒絶ができない」ことが挙げられます。つまり、契約書に記載されているルールを守り、建て替えや取り壊しなどの特別な事情が発生しなければ、借主はその物件に住み続けることができるということです。
定期借家契約
定期借家契約の一番の特徴は、その名のとおり「契約期間に定めがある」ということです。更新が可能な普通借家契約と異なり、定期借家契約は更新の概念がなく、契約期間の満了をもって契約が終了します。ただし、貸主と借主の同意があれば、再契約することが可能です。
また、定期借家契約は原則として中途解約ができません。しかし、特約がある場合や一定の条件を満たしている場合は、中途解約ができる可能性があります。
更新や中途解約ができない、という点から定期借家契約の物件は、賃料が相場よりも低くなることが多いです。諸条件に問題がないのであれば、定期借家契約の物件も選択肢に入れると、お得な物件に出会えるかもしれません。
賃貸借契約における不動産屋さんの役割とは
賃貸借契約を結ぶと、「大家さん(オーナー)」「仲介会社」「管理会社」という言葉をよく耳にします。三者が別々の人または会社である場合もあれば、3つの役割を1人または1社が担っている場合もあります。それぞれどのような役割があるのか以下で確認してみましょう。
大家さん、仲介会社、管理会社の違い
大家さんとは、物件の所有者です。同じ建物内や近所に住んでいる場合もあり、日常的に顔を合わせることになる人もいるかもしれません。一方で、一度も顔を合わせることなく退去する、という人も多くいます。
仲介会社とは、賃貸借契約を結ぶ際に貸主と借主の間を取り持つ、言わば調整役のような存在です。物件の紹介や内見の案内、契約締結のサポートをする代わりに報酬として仲介手数料を得ます。(OHEYAGOも仲介会社に分類されます。)
管理会社とは、入居後から退去までの管理を担っています。具体的には、借主からの賃料を集金して貸主に送金したり、設備の故障やトラブル、苦情が発生した際に対応したり、退去時の立ち会いをしたりします。
いざというときの連絡先を把握する
ポイントは上記の三者が別々なのか否かです。「契約中は、何かあったら仲介会社に問い合わせれば良い」と思っている人は意外と多いのではないでしょうか。当然、仲介をしてくれた会社が管理までしている場合もあります。しかし仲介会社はあくまでも仲介だけで、管理は大家さん自身が行っていたり、別の管理会社が担っていたり、ということもよくあることです。
どのパターンが良い悪い、ということはありません。大事なのは、入居後の連絡窓口は誰なのか、ということをよく確認しておくということです。トラブルが発生したときは、気が動転したり焦ったりする可能性もあります。詳細は契約書や重要事項説明書に記載されているので、あらかじめ連絡窓口を把握し、いざというときに備えましょう。
賃貸借契約において大事な契約書類
物件の賃貸借やその使用に関係する諸条件に対し、貸主と借主双方が合意している証として契約書を締結します。また、契約書への署名・捺印に先立って、重要事項説明書の説明、及び同書への署名・捺印が行われます。
契約書関係は「なんとなく難しそうで内容をしっかり確認していない」という人も多くいるでしょう。しかし契約書や重要事項説明書に記載されていることが契約のすべてであり、あとから「知らなかった」と言うことはできません。
それぞれ、どんなことが記載されているのか、そしてその重要性について解説します。
重要事項説明書
重要事項説明書は、不動産屋さんが仲介や貸主の代理として物件の契約に携わる際に説明が義務付けられているもので、宅地建物取引士という資格を持った人が直接説明します。この書類には、建物や設備についての詳細な説明、賃貸借に関する諸条件が記載されています。具体的には、法令に基づく制限、インフラや設備の整備状況、賃料以外に授受される金銭の額や授受の目的、管理の委託先(管理会社)などです。
尚、重要事項説明は契約書に署名・捺印に先立って行われます。説明を聞いたうえで、契約を見送ることも可能です。ただし、契約日に重要事項説明も併せて行われることが多いため、「検討する時間がない」という場合もあります。不動産屋さんによっては、重要事項説明だけを先に行ったり、事前に書類を見せてくれたりするところもあるので、心配がある場合は事前に相談してみてはいかがでしょうか。
関連記事:重要事項説明書に捺印をする前に把握しておくべきポイント
賃貸借契約書
賃貸借契約書に記載される主な内容は下記のとおりです。
- 賃貸借の目的物 (物件の名称や所在地、構造について)
- 契約期間
- 賃料等
- 貸主及び管理業者
- 借主及び同居人
- 家賃債務保証業者、または連帯保証人
上記の他、契約条項として解約や明け渡し時の原状回復、禁止行為などが記載されています。詳細は下記URLをご参照ください。
記載内容をよく確認し、合意のうえで署名・捺印をする
契約後にトラブルが起こった際は、契約書に記載されている内容に則して解決します。一旦、署名・捺印したものについて、あとから「知らなかった」「勘違いしていた」「よく理解していなかった」と言うのは手遅れです。
契約書や重要事項説明書をよく読み、分からない点や心配な点は不動産屋さんに聞き、納得したうえで契約を結ぶようにしましょう。トラブルは滅多に起こらないだろうと考えるのではなく、「自分にも起こりうるもの」として考えることが大切です。
特約条項の確認も忘れずに
「特約条項(特約)」とは、契約条項の他に貸主と借主の間で特別に約束した取り決めを指します。特約の内容は基本条項の内容よりも優先して適用されるので、必ず内容を確認するようにしましょう。
特約に記載されることが多いものとして「原状回復」に関する取り決めが挙げられます。原状回復とは、「借主の故意や過失によって生じた傷や汚れは、退去時までに借主負担で修繕すること」を意味します。一方、経年劣化や通常損耗によって発生した修繕費用は原則として大家さんの負担です。しかし、「ハウスクリーニング代やエアコンクリーニング代を借主負担」とする特約が結ばれているケースもあります。
特約に記載された内容は、借主にとって著しく不利にならない限りは無効となりません。そして一度当事者間で合意してしまったものには履行義務が伴います。契約締結前によく内容を確認し、納得したうえで契約をするようにしましょう。
賃貸借契約におけるトラブル事例
賃貸借契約中において、トラブルなく過ごせるよう願うのは自然なことです。契約書の見落としや確認不足によってトラブルが発生しないよう、契約時には書類をよく確認しましょう。参考までに、賃貸借契約に関連して実際に起こっているトラブル事例をご紹介します。
エアコン故障時に大家さんが修繕費用を負担してくれなかった
最近では賃貸物件でもあらかじめエアコンが設置されていることが多くなりました。しかし、中には居室内のエアコンは大家さんが設置したものではなく、前入居者の「残置物」である場合があります。こうした場合、エアコンの使用は許可されているが、「故障時の修理は借主負担」としているケースが多いでしょう。
重要事項説明書の設備欄に、各設備の有無に加え使用条件が必要に応じて記載されています。また、この修理負担については特約に記載されている可能性もあります。エアコンに限らず、設備の修理は必ずしも大家さんの負担とならないケースがあることを理解したうえで、個々の契約内容を確認するようにしましょう。
経年劣化や通常損耗以外の傷や汚れがなかったのに、原状回復費用を請求された
入居中の掃除を怠らず、退去時は経年劣化や通常損耗以外の傷や汚れがなかったにもかかわらず、原状回復費用が請求、または敷金から差し引かれたというケースです。
退去時の原状回復については、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を出しています。それによれば、原状回復について「経年劣化や通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれること」「借主の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(きそん)は借主負担で復旧すること」が定められています。
一方で、このガイドラインはあくまでも参考であり、個別の契約書に記載される内容が優先されます。つまり、故意・過失などによって生じた傷や汚れがない場合も、特約でハウスクリーニング代やエアコンクリーニング代が借主負担と定められている場合は、退去時の原状回復費用が発生するということです。
綺麗に使ってさえいれば、「退去時の費用は発生しない」「敷金は全額返還されるもの」と安易に思い込まず、特約を含めた契約書の内容をよく確認しましょう。特に、敷金ゼロの物件に入居する場合は原状回復費用を敷金から差し引くことができないため、退去時に新たな支払いが発生する可能性があるので注意が必要です。
まとめ
普段聞きなれない専門用語が多く出てくる賃貸借契約では、分からない点があって当然です。分からないまま契約をせず、よく確認し納得したうえで、契約書に署名・捺印をすることが何より大切であると言えます。そうすることでトラブルを未然に防ぐことができたり、もしものトラブル発生時も冷静に対処できたりするでしょう。
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基本的な知識を備えるだけで、賃貸借契約はより身近なものになり得ます。契約をスムーズに進め、安心して新生活を送ることができよう、契約前には再度本記事を読まれてみてはいかがでしょうか。
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