築年数は何を基準に考えるべき?目安や確認すべきポイントを解説
- 築年数とは何か
- 築年数の考え方は建物の構造によっても異なる
- 築年数と耐震基準の関係
- 築年数で物件の良し悪しが決まるとは限らない
- 築古物件に住むときの確認ポイント
- まとめ
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築年数とは何か
築年数とは、建物が完成してからの経過年数のこと。古い建物を大切にする文化がある欧米とは異なり、日本では築年数が長い築古物件よりも、築年数の浅い築浅物件や新築物件の方が好まれる傾向にあります。地震を始めとする災害が発生しやすいという土地柄も、その背景にあるでしょう。
「築浅」や「新築」とは
築浅物件とは、建物が経ってからの年数が比較的浅い物件のこと。「築浅」については、明確な年数の定義はありません。しかし、一般的には築5年以内の物件について築浅と呼ぶことが多いです。築10年以内のものを指す場合もあります。
新築物件とは建てられてから1年以内かつ未入居の物件のことです。つまり、築半年の物件であっても、誰かが1度でも居住したものは、新築物件ではなく中古物件となります。
「築古」とは
築古についても明確な年数の定義はありません。10年を過ぎたら築古と呼ぶ場合もあれば、20年や30年を過ぎてから呼ぶこともあります。
築年数の考え方は建物の構造によっても異なる
築年数を考えるときは、その建物の構造にも着目しましょう。多くの場合、アパートであれば木造や軽量鉄骨造、マンションであれば重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造などが主要な構造。建物は、構造によって耐久性や耐震性といった特徴が異なることから、築年数への考え方も構造によって変わるのです。
各構造の特徴
主な建物の構造のうち、耐久性や耐震性に特に優れているのが鉄筋コンクリート造。(※)鉄筋の周囲にコンクリートを流し込んで固めたもので主要部分を構成しているため、頑丈な造りになっています。これに次いで耐久性や耐震性が高いものが、重量鉄骨造や軽量鉄骨造などの鉄骨造。重量鉄骨と軽量鉄骨では鋼材の厚さの違いから強度に差はあるものの、鉄骨の「折れにくい」という性質ゆえ、地震による倒壊リスクは低いとされていいます。
一般的に、その他の主要な構造に比べて耐久性や耐震性が劣るのが木造。ただし、それらの性能は使用している木材や木の種類、工法、適切なメンテナンスの有無、環境によっても異なるため、一概に「木造だからリスクが高い」とは言えません。
※大型マンションや超高層ビルで用いられることがある「鉄骨鉄筋コンクリート造」は、鉄筋コンクリート造以上に耐久性や耐震性に優れています
構造別の法定耐用年数
法定耐用年数とは、「税務上の価値」を算出するために定められている、構造別の耐用年数のこと。これらの年数の違いから、同じ築年数の建物であってもその構造によって、評価が異なることが分かります。実際の寿命とは異なりますが、建物の築年数を考える上では1つの目安となるでしょう。
構造別の法定耐用年数(住宅用)は以下のとおりです。軽量鉄骨造の場合は、その鋼材の厚さによって年数が異なります。鉄骨鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は、鉄筋コンクリート造と同様に47年です。
木造 | 22年 |
軽量鉄骨造(鋼材の厚さが3mm以下) | 19年 |
軽量鉄骨造(鋼材の厚さが3mm超4mm以下) | 27年 |
軽量鉄骨造(鋼材の厚さが4mm超) | 34年 |
重量鉄骨造 | 34年 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
なお、建物の寿命は明確に定められていません。それぞれの構造やその特徴に加え、地盤を含めた周辺環境や適切なメンテナンスの有無によって、寿命は変わるためです。
築年数と耐震基準の関係
築年数を見ておおよそ検討がつくのが、その建物が「旧耐震基準(旧耐震)と新耐震基準(新耐震)のどちらの基準に則して建てられたものか」ということ。旧耐震と新耐震の違いは、築年数を考える上で特に重要なポイントです。
耐震基準とは
耐震基準とは、一定規模の地震が起こっても建物が損壊や倒壊しないように定められた、建築基準法上の基準のこと。建物を建てる前は、現行の建築基準に適合していることを確認するために、建築確認申請をすることが義務付けられています。その申請が受理された日が「建築確認日」です。
大規模な地震が起こる度に見直されてきた耐震基準ですが、1981年の建築基準法改正では抜本的な見直しがされました。これにより、建築確認日が1981年5月31日以前のものを「旧耐震」、1981年6月1日以降のものを「新耐震」と呼びます。
旧耐震と新耐震
旧耐震では、「震度5強程度の中規模地震が起こったときに倒壊しない」ことが基準となっていました。これに対して新耐震では、「震度6~7程度の大規模地震が起こったときに倒壊しない」ことが基準です。過去の大震災での被災状況からも、旧耐震の建物は新耐震の建物に比べて、建物の損壊・倒壊割合が高いことが明らかになっています。
ただし、旧耐震のときに建てられた物件が必ずしも頑丈でないとは言い切れません。実際に、過去の大震災においても被害がなかったり軽微な被害で済んだりした旧耐震の建物も多数存在します。入居を検討している物件が旧耐震である場合は、建物の構造や地盤の強さなど、他の条件を加味して検討すると良いでしょう。
旧耐震か新耐震かの確認
旧耐震が新耐震かについての記載が見当たらない場合、どちらの耐震基準に則しているかは、築年数からある程度検討をつけるのが一般的。これは通常、賃貸物件情報には建築確認日の記載がないためです。
なお、建築確認日から建物が完成するまでには、一定の時間がかかります。短ければ1年以内、長ければ数年以上かかることも。2021年現在で築40年前後の物件については築年数だけで判断せず、どちらの耐震基準で建てられたものか、不動産屋さんに問い合わせてみると安心です。
耐震補強の有無
旧耐震の物件の中には、現行の耐震基準を満たすために耐震補強工事が施されているものがあります。耐震補強は、部分的にではなく建物全体でされていなければ、その効果は十分に発揮されません。しかし、中には「1階部分だけ」のように部分的な工事をしただけで「耐震補強済」としているものもあるため注意しましょう。
旧耐震建物への耐震補強工事は、その費用の高さからあまり進んでいないのが実情。旧耐震の物件への入居を検討している場合は、耐震補強の有無とその範囲をあらかじめ確認しておくと安心です。
築年数で物件の良し悪しが決まるとは限らない
築浅物件が必ずしも良い物件というわけでも、築古物件が良くない物件というわけでもありません。築浅物件も築古物件も、それぞれにメリット・デメリットがあります。これらを理解すれば、賃貸物件の良し悪しは築年数だけでは決まらないことが分かるでしょう。
築古物件のメリット
築古物件のメリットは、家賃の安さ。当然、立地や周辺環境、グレードによっては必ずしも相場より安いとは限りません。しかし、築年数に応じて徐々に家賃が下がっていくのが一般的です。設備や内装、共用部分における多少の古さを許容すれば、お得な物件に入居できるチャンスがあるでしょう。
築古物件のデメリット
間取によっては、住みにくい可能性もあるのが築古物件のデメリット。リノベーションがされていない場合は、間取りがLDKタイプではなくDKタイプであったり、フローリングにクローゼットではなく、畳に押入であったり、という物件もあります。住みやすさの感じ方は人それぞれであるため一概には言えませんが、内装や設備の新しさや間取りについてこだわりがある場合は、単に家賃の安さだけで決めないように注意しましょう。
また、長く空き家になっていた築古物件は、給排水設備が劣化している可能性もあります。それらの設備については、入居前に大家さんか管理会社に点検を依頼しておくと安心です。
築浅物件のメリット
築浅物件のメリットは、その時点での最新設備が導入されている可能性が高いこと。必ずしも設備のグレードが高いとは限りませんが、新しいものの方が安心感や清潔感があると感じる人も多いでしょう。また、エアコンを始めとした家電は、新しいものの方が省エネで経済的です。
内装がきれいであることはもちろん、共用部分や外観がきれいであることも築浅物件のメリット。毎日通ったり使ったりする場所だからこそ、それらも重視したいという人は一定数いるでしょう。
築浅物件のデメリット
築浅物件のデメリットは家賃の高さ。一般的には、築浅物件の方が入居希望者も多く、家賃はやや高めに設定されています。
新築物件は誰も住んでいないという点がメリットである反面、体質的にそれがデメリットとなってしまう人もいます。建材や塗料に含まれる化学物質やカビ、ダニなどが原因となって、めまいや吐き気、アレルギー症状が引き起こされるのがシックハウス症候群。法改正によって特定の化学物質の使用が規制されるなどの対策が施されていますが、発症リスクがゼロになったわけではありません。特に、新築物件の場合は化学物質を含む空気が流れやすいため、注意が必要です。
築古物件に住むときの確認ポイント
築古物件に住むこと自体は悪いことではなく、築古物件に住むからと言って地震のリスクと隣り合わせになるわけでもありません。むしろ、家賃や立地などその他の条件の良さから、積極的に築古物件を選ぶ人もいるでしょう。築古物件に住むときには、事前に以下のポイントを確認しておくと、安心して住むことができます。
修繕や管理が適切に行われているか
たとえ建物や設備が古くても、修繕や管理が適切に行われていれば、生活上困ることはなかったり、設備も問題なく使用できたりします。反対に、適切な修繕がされていない場合は、不具合が発生しやすいだけでなく、そうしたときも適切に対処してもらえないかもしれません。
アパートや賃貸専用のマンションの場合は、内見時に居室内のみならず、共用部分や建物周辺の状況を確認するのがオススメです。それらの管理が行き届いている物件であれば、仮に居室内の設備に不具合が発生したときも、すぐに対応してもらえるでしょう。
リフォームやリノベーションがされているか
築古物件の中には、リフォームやリノベーションがされている物件も多くあります。内装や設備が新しくなっていれば、築浅物件に住むのと遜色ない暮らしができることも。水回りが新しくなっているだけでも、生活のしやすさや快適性は向上するでしょう。
設備は問題なく使えるものか
設備に古さを感じる場合には、問題なく使えることを事前に確認したり、許可が得られる場合には、内見時に動かしてみたりすると安心です。特に、給湯器やエアコンは、入居後に不具合が見つかると不便を強いられます。仮に動いたとしても、稼働に時間がかかるもの、日常生活を送る上で支障が出そうなものについては、入居前の交換を打診してみるのも1つの手です。
地盤は強いか
建物の耐震性や安全性を考える上では、地盤の強さも重要。地盤が強い土地で旧耐震の物件に住むのと地盤が弱い土地で新耐震の物件に住むのでは、前者の方がリスクは低いと考えられる程、地盤の強さが与える影響は大きいのです。地盤が弱い土地では揺れが増幅して被害が大きくなることも、過去の大震災で証明されています。
つまり、耐震性や安全性を心配する場合は、築年数だけでなく地盤の強さにも目を向ける方が安心です。ジャパンホームシールド社の「地盤サポートマップ」では、全国の土地における地盤の強さ(地耐力)や地震時の揺れやすさ、液状化や土砂災害などのリスクについて調べられます。日本全国どこに住んでも災害が身近に感じられるからこそ、少しでもリスクが小さいエリアに住む方が安心して暮らせるでしょう。
まとめ
築年数を考えるときには、建物の構造や耐震性に注目するようにしましょう。同じ築30年の物件であっても、木造と鉄筋コンクリート造では評価や考え方が異なります。また、適用された耐震基準が旧耐震と新耐震のどちらであるかは、築年数を見る上では欠かせないポイントです。
建物はその構造ごとに特徴や法定耐用年数が異なるため、築年数の目安を一概に言うことはできません。築浅物件と築古物件のそれぞれが持つメリット・デメリットを理解した上で、構造別に希望の築年数を決めておくと賃貸物件探しがスムーズに進められるでしょう。
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