気泡コンを使った建物とは?特徴や気になる防音性について解説

公開:2021/08/30
更新:2023/03/06
気泡コンを使った建物とは?特徴や気になる防音性について解説
「気泡コン」や「ALC造」という言葉を一度は目にしたことがある人もいれば、ピンとこない人もいるでしょう。主要な建材や構造に比べれば、その名はメジャーではありません。しかし、その性能の高さからあらゆる建物で使われてきたのが気泡コンです。 本記事では、気泡コンの概要や、それが使われた建物に住むときのメリットやデメリットを解説します。気泡コンの特性を理解すれば、賃貸物件探しの選択肢が増えるでしょう。

「気泡コン」とは?

気泡コンとは、セメントや生石灰などのコンクリートの材料を高温で熱して気泡加工した「軽量気泡コンクリート」のこと。コンクリートの中に無数の気泡が含まれているため、エアーコンクリートとも呼ばれる程、通常のコンクリートに比べて軽いのが特徴です。

気泡コンを板状にした建材のことをALCパネルと呼びます。主に外壁に使われることが多い、ALCパネル。1962年にヨーロッパからALC技術が伝わって以降、半世紀以上に渡って、国内のあらゆる建物に使われてきました。

軽量化されたコンクリート

気泡コンの特徴の1つは、気泡加工によって軽量化されていること。その重さは、一般的なコンクリートの約1/4と言われています。軽さを誇る一方で、強度が高いことも気泡コンの魅力です。

ALCパネルはその耐久性の高さゆえ、戸建住宅やアパート以外にも、マンションや超高層ビルで使われています。地盤が弱い地域で重量のある建物を造ると生じるのが、地盤沈下のリスク。そうしたときにも、建物全体の軽量化が図れる気泡コンは重宝されるのです。

気泡コンを使った「ALC造」は鉄骨造の一部

一般的に「ALC造」と記載されるものは、鉄骨造の一部に分類されます。これは、外壁にはALCパネルを使いつつ、柱や梁といった骨組みは鉄骨で構成されているためです。鉄骨ALC造と記載されることもあります。

一方でALCパネルは、鉄骨の建物だけでなく、木造の外壁にも広く使われてきました。しかし、木造に使用されているときは、ALCの表記がされていないことも多くあります。木造物件でALCパネルの使用有無を確認したい場合には、不動産屋さんに問い合わせをすると良いでしょう。

気泡コンのメリットとデメリット

賃貸物件探しをする上で気になるのが、気泡コンが使われたALC造の物件に住むメリットとデメリットです。これらを知れば、気泡コンやALC造の建物の良し悪しが判断できるようになります。

気泡コンのメリット

気泡コンが使われている建物に住む上でのメリットは、断熱性や耐火性、耐久性、防音性が高いことです。

断熱性

ALCパネルは、表面の温度が裏面に伝わりにくい構造になっています。そのため、一般的な外壁材に比べて外気の影響を受けにくく、夏の暑い日も冬の寒い日も、部屋の中の温度を一定に保ちやすくなるのです。断熱性の高さは、快適性に繋がるだけでなく、エアコン効率も良くなるため、経済的とも言えます。

耐火性

そもそも気泡コンは不燃材料であり、耐火性に優れています。原料に有機質が含まれていないため、火災時に有害物質が出ることもありません。

もしもの火災リスクを考えると、耐火性の高さは重要です。火災は自分の不注意によるもののほか、隣戸や近隣建物からのもらい火による延焼、放火、地震によるものなど、身近に潜むあらゆるリスクによって引き起こされます。壁の耐火性が高ければ、もらい火のリスクや、居室内の延焼リスクを軽減することができ、日常生活を送る上での安心材料にもなるでしょう。

耐久性

気泡コンは、経年変化しにくい素材で構成されています。そのため、ALCパネルはひび割れや反りなどが起こりにくく、長い期間安心して使用することが可能です。定期的にメンテナンスをすれば、ALCパネルの耐久性は50年以上とも言われています。

防音性

ALCパネルを使った建物は、一般的な木造や軽量鉄骨造の建物に比べて防音性が高いのもメリット。内部に含まれる気泡が音を吸収する役割を果たし、外からの音を通しにくくしているのです。ただし、防音性は壁の厚さやメンテナンス状況、遮音材の有無によってもその効果が変わります。

騒音の有無は、暮らしの快適性を左右する要素。外からの騒音が入ってこない、自分の出す音が周囲に漏れない、またはそれらが最小限に留められている環境であるか否かは、賃貸物件探しにおいても重要なポイントです。

気泡コンのデメリット

気泡コンが使われた賃貸物件に住むデメリットは、適切に管理されていない物件では雨漏りの心配があること。その性質上、気泡コンには吸水力が高いという側面がある一方で、耐水性は低いとされています。防水加工がされていない状態で長時間雨にさらされると、内部に水が浸透し、膨張やひび割れ、腐食に繋がり、雨漏りを引き起こすのです。

通常、ALCパネルには防水加工が施されています。しかし、風雨にさらされることでその効果は徐々に減衰。そのため、定期的なメンテナンスが不可欠です。

賃貸物件の中には、大家さんや管理会社によって建物の維持管理がしっかり行われているものと、そうでないものがあります。これを見極めるには、内見時に建物周辺や共用部分の管理状況を見るのがポイント。外壁のひび割れが散見されたり、塗装がはげていたり、周辺に雑草が伸び放題になったりしている場合には、特に注意しましょう。

気泡コンを使っていない主な建物構造とは

気泡コンでできたALCパネルが使われていない主な建物の構造は、木造や鉄骨造、鉄筋コンクリート造などです。各構造の特徴をALC造のものと比較し、建物の構造を選ぶ上での参考にしてみましょう。

木造

日本で昔から親しまれてきた木造は、戸建住宅やアパートにおける代表的な構造です。木造の特徴は、調湿性や通気性の高さ。建築コストが安く、賃貸物件の賃料も安く設定されています。

一方で、他の構造に比べて劣るのが耐久性や耐震性、耐火性。加えて、ALCパネルを使っていない通常の木造住宅の場合は、防音性が低いとされるのが一般的です。特に、集合住宅であるアパートでは、隣戸からの生活音や話し声が聞こえることも珍しくありません。

軽量鉄骨造

木造と並び、戸建住宅やアパートの代表的な構造である、軽量鉄骨造。比較的安い賃料に加え、木造に比べて耐震性や耐久性が高いことも選ばれる理由です。

木造同様、ALCパネルを使っていない場合は、断熱性や防音性が低いというデメリットがあります。当然、物件ごとの壁の厚さにもよりますが、隣戸から聞こえてくる音が気になることも多いでしょう。また、通気性や調湿性は、木造よりも劣るという側面があります。

重量鉄骨造

3階以上のマンションやビルの建築に用いられることが多い、重量鉄骨造。鉄骨がもつ「折れにくい」という性質上、一定の耐震性と耐久性があります。使用される鋼材は6mm超で、それ以下の鋼材を使う軽量鉄骨造に比べて造りが頑丈です。

重量、軽量問わず、鉄骨造は耐火性が低いのが難点。鉄には、温度の上昇とともに柔らかくなり、強度が低下するという特性があります。よって、耐火被覆加工と呼ばれる、耐火性を高める処置がされているかが、鉄骨造の物件を選ぶ上でのポイントです。防音性は軽量鉄骨造同様、あまり期待できません。

鉄筋コンクリート造

大型マンションや高層ビルに用いられることが多い、鉄筋コンクリート造。鉄筋の周りにコンクリートを流して固めた部材で建物の主要部分を構成しており、その高い強度が魅力です。耐久性のほか、耐震性や耐火性、防音性においても優れています。

一方で、鉄筋コンクリート造は木造や鉄骨造に比べて建築コストが高いため、賃貸物件の家賃も高いのが一般的です。また、気密性の高さは、防音性の観点からはプラスの要素である一方、湿気がこもりやすいという点ではマイナス要素でもあります。

鉄筋コンクリート造の強度をさらに高めたものが、鉄骨鉄筋コンクリート造。超高層ビルや大型マンションで用いられることが多く、その強度や性能の高さに比例してコストや家賃は高くなっています。

気泡コンの防音性は内見時に要確認

気泡コンは先述のとおり、その防音性の高さがメリットの1つです。しかし、その性能については個々の物件によって多少の差があります。つまり、同じようにALCパネルを使っていても、その防音性能は物件によって異なるのです。

音の感じ方は人によって様々。周辺環境によっては、求める防音レベルが変わることもあります。よって、個々の物件の防音性は内見時に自分の耳で確認したり、部屋の位置や隣戸の間取りについて可能な限り情報収集したりしておくことがオススメです。

防音性能は物件によって異なる

外壁にALCパネルを使った物件の場合、防音性能の度合いを左右する要素の1つとして挙げられるのが、壁そのものの厚さ。現在、国内にはALCパネルを製造しているメーカーが3社あります。各社共にJIS規格(※)に準拠して製造しているものの、その厚さは37mmであったり50mmであったりと必ずしも同一ではありません。

また、アパートやマンションなどの集合住宅で暮らす際は、隣戸からの騒音も気になります。ALC造であっても、隣戸との境にある戸境壁にALCパネルが使われているとは限りません。戸境壁にもALCパネルが使われているのか、一般的に防音性が低いとされる石膏ボードであるかは、不動産屋さんに問い合わせて確認することをオススメします。

参照:一般社団法人ALC協会「種類と規格」

※JIS規格とは、日本の産業製品に関する規格や測定法などが定められた日本の国家規格のこと。ALCパネルは、JIS規格(JIS A 5416)に適合した製品です。

内見時に自分の耳で確認すると安心

音の聞こえ具合や響き具合については、内見時に窓を閉めきった状態で、自分の耳で確認すると安心です。曜日や時間帯で外の騒音レベルが異なる環境の場合は、家にいることが多い時間帯か、最も騒音が大きい時間帯に合わせて内見をすることをオススメします。例えば、大通りに面した物件の場合、昼間と夜間、平日と休日ではその交通量の差から、外の音の聞こえ具合には差があるからです。

部屋の位置や隣戸の間取りも重要

防音性を意識する上では、部屋の位置や隣戸の間取りも重要。外からの騒音を気にする場合は、外に接する壁や窓が多い角部屋は避けた方が無難です。他方、隣戸からの騒音を気にする場合には、中部屋よりも角部屋の方が快適に暮らせます。

居室内のどこが隣戸と接しているかによって、互いの音の伝わり方も変わってきます。例えば、お風呂やトイレなどの水回りが接している場合には、生活音や話し声が伝わりにくくなるため、隣戸からの騒音の心配は少ないです。隣戸の間取りについては不動産屋さんの手元に資料がない可能性もあるため、内見日までに用意してもえるよう、事前に依頼しておきましょう。

気泡コンを使った賃貸物件はこんな人にオススメ!

気泡コンが使われた賃貸物件へ入居は、「家賃は抑えたいけれど、一定の性能を求める人」にオススメです。気泡コンのメリットは、断熱性や耐火性、耐久性、防音性の高さ。鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の物件では、より高い性能が期待できるものの、家賃の高さがネックになります。よって、家賃と性能のバランスを重視する場合にオススメなのがALC造です。

まとめ

気泡コンとは、コンクリートの材料を気泡加工し、軽量化したもの。その軽さや強度が重宝され、戸建住宅から高層ビルまで、あらゆる建物に使われてきました。

気泡コンを板状にしたALCパネルを外壁に使った建物を一般的にALC造と呼びます。ALC造の建物に住むメリットは、断熱性や耐火性、耐久性、防音性が高いこと。反対にデメリットは、その耐水性の低さから雨漏りのリスクがあることです。防音性については物件ごとに差があるため、内見時によく確認する必要があります。

ALC造の賃貸物件は、「家賃は抑えたいけれど、一定の性能を求める人」にオススメ。特に、木造や鉄骨造の物件を検討している人は、ALC造の物件も検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人
中條 ふみ
OHEYAGO宅建士ライター
中條 ふみ
銀行とメーカー勤務を経て、夫婦で不動産賃貸経営をする子育てライター。これまでに中古アパート、一棟ビル、戸建の売買や賃貸を経験。保有資格は、宅地建物取引士と2級FP技能士。 自身の経験を活かしながら、女性目線を盛り込んだ不動産関連記事や取材記事を多数執筆。
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