防音性の高い賃貸物件の探し方とは?自分でできる防音対策と共に解説

公開:2021/06/25
更新:2023/05/17
防音性の高い賃貸物件の探し方とは?自分でできる防音対策と共に解説
「周囲の音で悩まず快適に暮らしたい」と考える人は多くいるでしょう。防音性の高さは、日々の暮らしの快適性を向上させます。しかし、防音性の高い賃貸物件を探すときは、「どこに着目すれば良いか分からない」という人もいるかもしれません。 本記事では、防音性の高い賃貸物件の探し方や注意点を目的別に解説します。特徴やポイントを押さえながら物件探しをすることで、より理想に近い物件が見つかるでしょう。

防音性の高い賃貸物件の特徴とは

賃貸物件に限ったことではありませんが、一般的に防音性の高い物件は、建物の構造や窓、壁や床に特徴があります。賃貸物件探しでは、居室内の清潔さや設備、築年数などに目が行きがちです。しかし、防音性を重視するのであれば、まずは構造や内装に着目してみると良いでしょう。

建物の構造が鉄筋コンクリート造

最も防音性が高いとされる建物の構造は、鉄筋コンクリート造です。鉄筋コンクリート造では、鉄筋とコンクリートを組み合わせた部材を柱とし、その柱と柱の間の壁にもコンクリートが流し込まれています。したがって、建物全体の気密性が高く、外からの騒音も大幅に軽減することができるのです。鉄骨鉄筋コンクリート造も同程度の防音性を有しています。

他方、木造や軽量鉄骨造、重量鉄骨を用いた鉄骨造の場合は構造上、柱と壁の間に一定の隙間ができてしまいます。そのため、いずれの構造も鉄筋コンクリート造に比べて、気密性も防音性も低いのが特徴です。 なお、鉄筋コンクリート造の建物であっても全ての音を遮断できるわけではないことを覚えておきましょう。特に、足音や物を床に落としたときの衝撃音は階下に伝わることがあります。

窓が二重サッシ

窓が二重サッシの場合は、外からの騒音に対する防音性が高いでしょう。二重サッシとは、内窓と外窓のように窓が2つあるものを指し、二重窓とも呼ばれています。窓を2つ開ける必要はありますが、防音効果のみならず断熱効果や結露発生を抑制できるのが利点です。

壁や床が厚い

壁や床が厚く、中が空洞になっていなければ、上下左右に接する住戸からの音は伝わりにくくなります。鉄筋コンクリート造の建物であれば、多くの場合で壁や床にもコンクリートが流し込まれているため、防音性の高さが期待できます。ただし、隣戸との境にある戸境壁の厚さが180mm未満の場合は、防音性が下がるため注意が必要です。

また、木造や軽量鉄骨造、鉄骨造の物件の中には、壁や床に防音性や遮音性の高い素材を用いて防音効果を高めているものもあります。例えば、壁に用いられる石膏ボードが二重になっていたり、床に遮音フローリングが用いられていたりするケース。壁や床に、吸音性に優れたグラスウールや遮音シートが用いられている場合も一定の防音効果が期待できます。

防音性の高い賃貸物件を探す理由

防音性の高い賃貸物件を探す理由は、大きく分けて2つです。理由ごとに、賃貸物件の探し方も異なります。まずはこれらの理由の違いを確認し、自分がどちらに当てはまるのかを明確にしましょう。

周囲の騒音に悩まされず快適に暮らしたいから

1つ目は、「近隣住戸や外からの騒音に悩まされることなく、快適に暮らしたい」という理由です。建物の気密性が低ければ、外からの騒音が気になり、壁や床が薄ければ、近隣住戸からの生活音に悩まされます。自分の生活音や話し声も過度に気にするようになれば、快適とは程遠い暮らしになりかねません。

アパートやマンションのような集合住宅でよくあるのが、騒音トラブル。物件次第でトラブルを可能な限り回避でき、快適に暮らせるのであれば、最初から「防音性の高い物件を選びたい」と考える人も多いでしょう。

楽器演奏やペット飼育をしたいから

2つ目は、「楽器演奏やペット飼育をしたい」という理由です。防音性が高くない物件で楽器演奏をすると、周囲に音や振動が容易に伝わってしまいます。犬のように鳴き声が大きいペットは、近隣から苦情が来る可能性もあるでしょう。

そもそも、賃貸物件における楽器演奏やペット飼育については、契約書にその可否が明記されていることがほとんどです。「電子楽器なら問題ないだろう」「鳴かない動物なら大丈夫だろう」と自己判断で契約書の内容を無視するのは避けましょう。

目的別!防音性の高い賃貸物件の探し方と注意点

防音性の高い賃貸物件は、上記の理由、及び目的によって探し方が異なります。せっかく防音性が高く、気に入った物件が見つかったのに「楽器演奏が不可だった」ということがないように、目的に合わせた探し方をしましょう。

周囲の騒音に悩まされず快適に暮らしたい場合

賃貸物件を選ぶときの条件やその優先順位は人それぞれです。「周囲からの騒音に悩まされない」ということを最優先したい場合は、以下の手順や条件、注意点を参考にして物件探しをすると良いでしょう。

構造や立地、階数に注意して探す

とにかく防音性の高さを重視する場合は、候補を鉄筋コンクリート造のマンションに絞ることをオススメします。しかし、鉄筋コンクリート造のマンションには家賃が高いという側面があります。予算の兼ね合いで、その他の構造から探す場合には、壁や床に防音性を高める素材が使われているかを不動産屋さんに尋ねるようにしましょう。

外からの騒音を考える上では立地選びも重要です。昇降者数が多い駅や繁華街に近い物件、大通りに面した物件は、騒音が聞こえやすかったり、夜遅くまで騒がしかったりする可能性があるためオススメできません。

また、近隣住戸からの騒音を気にする場合は最上階の角部屋を選ぶと良いでしょう。反対に、自分が出す音が気になる場合は一階の角部屋が安心です。

なお、鉄筋コンクリート造のマンションの中でも特に防音性が高いのが分譲マンション。一般的な賃貸マンションに比べて分譲マンションは、より建築にコストをかけてしっかりとした造りにしているため、防音性も高いのです。

内見時に防音性を確認する

内見時は必ず自分の耳で、物件の防音レベルを確認するようにしましょう。戸境壁をノックしてみて、軽い音や高い音がする場合は音を通しやすい可能性が高いため、注意が必要です。外からの騒音については、窓を開けた状態と締め切った状態で音の聞こえ方を比べてみましょう。

特に、在宅勤務の人は平日昼間の騒音も気になるところです。物件周辺に騒音を出しそうな工場や作業所、解体工事や建築計画の看板がないかを併せて確認することをオススメします。解体や建築工事も規模によっては長期間に渡って騒音が発生する場合があるため、注意しましょう。

内見は日時を工夫する

一度内見をして気に入った物件は、曜日や時間帯を変えて再度内見をすると安心です。外からの騒音も、周囲の生活音も曜日や時間帯が変われば、聞こえ方が変わる可能性があります。例えば、平日昼間は人通りも多く騒音を感じやすい環境であっても、夜間や土日は静か、ということもあるでしょう。

自分が家にいることが多い時間帯や曜日に合わせて内見をすると、より実生活に近い形で騒音の有無を確認することができます。

隣接する部屋の間取りも確認する

内見をするときは、隣戸の間取りも確認するようにしましょう。隣戸と接しているところが収納スペースであったりお風呂やトイレなどの水回りであったりする物件は、お互いに音が伝わりにくくなるという利点があります。事前に不動産屋さんへ依頼しておけば、隣戸の間取り図を用意してくれるかもしれません。

楽器演奏やペット飼育をしたい場合

そもそも防音性の高い賃貸物件を探す目的が、楽器演奏やペット飼育の場合は、それらが許可された物件から選ばなければなりません。楽器演奏やペット飼育を巡ってはトラブルも起きやすいため、物件ごとに許可の有無があらかじめ明確になっています。契約書の内容に違反した場合は、退去や損害賠償費用が求められる可能性もあるため、物件探しの段階から注意するようにしましょう。

最初から楽器演奏やペット飼育が許可された物件を選ぶ

楽器演奏やペット飼育をすることが明らかである場合は、それらが許可されている物件を選ぶことが大切です。物件は必ずしも鉄筋コンクリート造とは限りません。しかし、楽器演奏やペット飼育によって一定の音が出ることを前提に、壁や床に防音対策が施されている場合が多いです。

まずは不動産ポータルサイトで、検索条件に「楽器可(相談)」や「ペット可(相談)」を選択した上で候補を絞るようにしましょう。物件の数に限りがあるため、最初から多くの条件を入れるのではなく、優先順位に従って徐々に条件を増やして候補を絞っていくことをオススメします。

楽器やペットの種類によっては演奏や飼育が許可されないことも

楽器演奏やペット飼育を認めている賃貸物件であっても、楽器やペットの種類には一定の制約があることがほとんどです。例えば、電子ピアノはOKでグランドピアノやアップライトピアノはNG、小型犬はOKで大型犬はNGなど。そもそも自分の楽器やペットが許可されるのかについては、内見をする前に不動産屋さんに確認するようにしましょう。

なお、楽器演奏ができる物件であっても、その多くが「完全防音」にはなっていないため、あらかじめ演奏できる時間を定めています。24時間演奏ができる完全防音物件もありますが、数が少なく空きも出にくいため、特に都心は入居チャンスが限られているでしょう。近隣にある似た条件の賃貸物件に比べて、家賃も高く設定されています。

賃貸物件で防音性を高めるためにできることとは

防音性が高い賃貸物件に住みたいと思っていても、家賃や空室状況の関係から、必ずしも希望通りの物件に住めるとは限りません。そのような場合は、入居者自身が部屋の防音性を高めるための工夫をすると良いでしょう。

なお、壁や床を損傷する可能性がある造作を加えることはオススメできません。賃貸物件の入居者は、退去時に原状回復義務を負っているため、造作を加えた場合は全て元に戻す必要があります。通常損耗や経年変化以外の損傷箇所については、修理費が入居者負担となる点に注意しましょう。

防音カーテンをつける

窓が二重サッシでない場合は、防音カーテンをつけることをオススメします。特殊な加工が施されている防音カーテンは、外からの騒音を遮るだけでなく、部屋の中からの音漏れを防ぐ効果があるとされています。また、防音カーテンは複数の生地が重なって厚手のつくりになっているため、防音効果だけでなく、遮音効果や断熱効果も期待できるでしょう。

ただし防音効果があるのは、主に中高音域の音に対してです。そのため、車や電車などから生ずる交通騒音や工事の騒音についての効果は限定的でしょう。

床に防音マットや防音カーペットを敷く

主に、階下へ衝撃音が伝わるのを防ぐのに効果的なのが、防音マットや防音カーペットの使用です。厚みがあるものや、密度が高くて重量感があるものの方が、防音効果は高いとされています。様々な素材やタイプのものが売っているので、用途や好みに合わせて選ぶと良いでしょう。

家具の配置を工夫する

家具の配置によっても、防音効果を高めることができます。例えば、戸境壁に面して本棚を設置したり、テレビを置いたりするなど。壁を背にテレビを設置すれば、壁の向こう側からの騒音を紛らわすことができます。テレビに内蔵されているスピーカーから出る音は、テレビの正面に向けられているので、隣戸への騒音にもなりにくいでしょう。

一方で、隣戸からの騒音が聞こえやすい壁側へのベッド配置は、睡眠に悪影響を及ぼしかねないためオススメできません。

まとめ

防音性の高い賃貸物件を探すときは、まずは建物の構造に着目しましょう。最も防音性が高い構造は、鉄筋コンクリート造。窓が二重サッシになっていることや、壁や床が厚いことも防音性を高める要素です。

同じ防音性の高い賃貸物件探しであっても、その理由が「周囲の騒音を気にしているから」なのか、「楽器演奏のような特定の目的があるから」なのかによって、探し方や注意点は異なります。これらの理由を明らかにした上で、その他の条件や優先順位を決めながら進めると、物件探しがスムーズに進むでしょう。

防音性の高い物件に入居できなかった場合も、防音カーテンをつけたり、防音マットを敷いたりすることで、防音性を高めることができます。壁や床、天井、既存設備を傷つけることがないように十分注意しながら、少しでも快適に暮らせる工夫をしてみましょう。

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この記事を書いた人
中條 ふみ
OHEYAGO宅建士ライター
中條 ふみ
銀行とメーカー勤務を経て、夫婦で不動産賃貸経営をする子育てライター。これまでに中古アパート、一棟ビル、戸建の売買や賃貸を経験。保有資格は、宅地建物取引士と2級FP技能士。 自身の経験を活かしながら、女性目線を盛り込んだ不動産関連記事や取材記事を多数執筆。
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