心理的瑕疵物件とは?具体例や見分け方をご紹介

公開:2023/08/04
更新:2023/11/02
心理的瑕疵物件とは?具体例や見分け方をご紹介
心理的瑕疵物件は一見難しそうな言葉ですが、理解せずに該当する物件に入居すると後からトラブルに発展してしまうこともあります。ここでは心理的瑕疵物件の詳細と見分け方などを解説していきます。

心理的瑕疵物件とは

心理的瑕疵物件

心理的瑕疵物件の概要

心理的瑕疵(精神的瑕疵)物件とは入居を検討する際に心理的に抵抗がある物件を指します。国土交通省が制定した「不動産取引における 心理的瑕疵に関するガイドライン」上の定義では「不動産取引においては、取引対象となる不動産にまつわる嫌悪すべき歴史的背景がある場合に、いわゆる心理的瑕疵があるといわれる」とされており、たとえば居住用の物件で事故死や自殺があった場合がその嫌悪すべき歴史的背景となります。 ただ、どのような場合に入居者が嫌悪するのかは受け手側の気持ちにもよるため、どこからどこまでが心理的瑕疵になるかはおおよそしか決まっていません。 要は入居する際に皆さんが「なんとなくここに住むのは気持ち的に嫌」といった状態になったらそれは心理的瑕疵です。

出典:不動産取引における心理的瑕疵に関するガイドライン 国土交通省

事故物件との違い

事故物件とは「自然死や不慮の事故死以外の死」や「特殊清掃が必要になる死」が発生した物件のことです。 つまり事故物件とは実際に起きた事実がある物件を指し、心理的瑕疵物件とはそれに対し、入居する方がどう思うかの心理的な抵抗になります。 そのため事故物件に当てはまらないネガティブな事象があった場合もそれは心理的瑕疵物件となります。

心理的瑕疵物件の具体例

心理的瑕疵物件 例

ここでは実際にどのようなケースが心理的瑕疵としてよく取り扱われるのか具体例をご紹介します。

例1 物件が人の死に関わっている

上記でもご紹介した、いわゆる事故物件です。 建物のひび割れなど実害がなかったとしても、 室内で殺人など事件があって心理的に抵抗があるは心理的瑕疵物件となります。また部屋の中、建物内、敷地内、敷地周辺などどこまでの範囲で起きた事件が心理的瑕疵物件となるかはこれも受け手側次第となります。 事故があった場合に入居検討者にそれを伝える告知事項でも不動産屋さんがどこまでを告知事項とするかに明確な基準はなく、後から「最初から知っていればここに住まなかったのに!」などトラブルの要因にもなっています。 ただ、そのようなケースは稀で客観的に明らかな心理的瑕疵を内緒にしていた場合は契約不適合となり契約違反となるのでそこまで懸念することはないでしょう。

例2 嫌悪施設が近隣にある

嫌悪施設とは、火葬場や墓地、刑務所など直接影響はないがあまり周囲にあってほしくない建物を指します。 またそのような公的施設だけでなくゴミ屋敷や度を超えたペットの多頭飼いをしているなど人為的に嫌悪の対象となったものもこれに当てはまることがあります。

例3 指定暴力団の事務所が近隣にある

嫌悪施設以外にも暴力団事務所なども心理的瑕疵に該当します。こちらは本来、近隣に暴力団事務所があれば重要事項説明時にその旨が伝えられます。 ただ、上記の公的施設と異なり暴力団事務所は外から分かりにくく、不動産屋さん自身も近隣にあったことに気づかないケースもあります。入居前にネット上から自分でも一度確認してみましょう。

心理的瑕疵物件に告知義務はあるのか

告知事項を伝える

どこまでが心理的瑕疵に該当するのかは受け手によるため現在も曖昧ですが、判例や有識者の討論から少なくとも一部の場合は告知事項として入居者に伝えることを不動産屋さんは義務付けられています。 また、物件の売買と賃貸では告知が必要な内容が変わってくることもあります。ではどのような場合に告知義務にあたってどのような場合にあたらないのかみていきましょう。 ここでは心理的瑕疵、による告知事項のみご紹介していますので、土壌汚染があった場合など別の瑕疵については別途告知事項があります。

告知が必要な場合

人の死が受け手側の判断に重要な影響を与える事案

国土交通省が令和3年10月に策定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では原則として「宅地建物取引業者は、人の死に関する事案が、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼ すと考えられる場合には、これを告げなければならない。」となっています。ここでの「人の死」は自殺や殺人などを指します。

出典:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました 国土交通省

事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案

本来は告知の必要のない孤独死などの自然死や日常生活の不慮の死などもそれが事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案と判断された場合には告知をする必要があります。

買主・借主から事案の有無について問われた場合

上記のように決まった内容だけでなく、借主や買主から質問した場合も告知をする必要があります。なので、不安があればこちら側から不動産屋さんに相談してみましょう。 その場合、人の死の発覚から経過した期間や死因に関わらずに告知をする必要があるためどのタイミングで相談しても大丈夫です。 ただ、遺族等の名誉に関わることについては配慮する必要があり、氏名、年齢、家族構成などまで深掘りするのは避けましょう。

社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合

最後に人の死に関わらず社会的影響の大きい事案についても告知の必要があります。

告知が不要な場合

告知が不要な事項についても国土交通省のガイドラインを参考にご紹介していきます。

出典:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました 国土交通省

取引の対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死

自殺や殺人ではなく、老衰による自然死や転倒事故や誤嚥など日常生活の中での不慮の死は告知義務の対象外になります。

事案発生から3年間が経過した物件

取引の対象不動産で発生した自然死・日常生活の中での不慮の死などの事案発生(特殊清掃等が行われた場合は発覚)から概ね3年間が経過した後は告知義務の対象外になります。 ただ3年間が経過した後でも、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案については告知を行う必要があります。 ただ上記は賃貸の場合であり、売買の場合は告知義務に希釈期間はなく無期限となります。

隣接住戸・共用部分の事件

取引の対象不動産の隣接住戸・日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した下記の人の死は告知義務の対象外になります。
・自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死
・特殊清掃等が行われた自然死・日常生活の中での不慮の死

心理的瑕疵物件の見分け方

心理的瑕疵物件 見分け方

心理的瑕疵物件の見分け方は事故物件の見分け方とほぼ同様です。 別の記事にて詳細を記載しておりますのでそちらもご確認ください。

関連記事:事故物件とは?定義や告知義務、確認ポイントを徹底解説

1.物件の図面や備考欄を確認する。

告知事項や瑕疵がある物件は図面に「告知義務あり」の記載があります。

家賃が周辺相場より安い

周辺の相場よりも家賃が2-3割安い場合は要注意です。

不自然な修繕箇所がある

フローリングが一部のみ新しかったりなどポイントで修繕がされている場合はその理由を確認していましょう。

不動産屋さんに聞いてみる

前述していますが、買主・借主から事案の有無について問われた場合に不動産屋さんは告知があればそれを伝える義務があります。 不安な場合は聞いてみましょう。

インターネットで調べる

インターネット場では事案のあったエリアをマッピングしているサイトがあります。こちらを確認することで自身の住みたい物件だけでなく、周辺の治安状況も知ることができます。

心理的瑕疵物件に住むメリット

心理的瑕疵物件は人によっては好条件な物件にもなりえます。

家賃が安い

心理的瑕疵物件は通常の物件と比較して人気がないため、管理会社やオーナーさんは入居者を見つけるために家賃を安くするなどをして集客を行います。 もし、いわゆる事故物件でも気にならない場合は周辺の家賃相場よりかなりお得な金額で入居をすることができます。

比較的に入居しやすい

賃貸物件の流動性は激しく人気の物件は募集が開始した翌日には募集終了することもあります。その中で心理的瑕疵物件は中々入居者がつかないことから、事故物件であることを気にしない場合は好条件の物件を複数探すことができます。

入居後に心理的瑕疵物件と気づいた場合

追完請求はできない

追完請求とは本来の契約内容に不適合があった場合に代替品の引き渡しや目的物の補修請求を行うことです。 例えば入居した物件が雨漏りをしていた場合、住居としての役割を成していないため、追完請求ができます。 しかし、心理的瑕疵は心理的なもののため代替品の引き渡しや目的物の補修請求ができません。

契約不適合による損害賠償は交渉できる

契約不適合の場合は追完請求以外にも家賃の減額や契約解除は可能です。 貸主や売主に不手際があり、入居後に心理的瑕疵物件だと気づいた場合にはそのような交渉が可能です。

よくある質問

他にはどんな瑕疵がある?

心理的瑕疵以外にも、物理的瑕疵、環境的瑕疵、法律的瑕疵の合わせて4つの種類が存在します 物理的瑕疵は雨漏りやシロアリ被害など物理的な欠陥、環境的瑕疵は心理的瑕疵に類似しており周囲の騒音や異臭など、法的瑕疵は法律を無視して建築された違法建築物など法的に欠陥がある場合を指します。

告知義務があっても内緒にされることはある?

ほぼないです。告知義務を無視は契約不適合といった違反行為になります。そのため契約後のリスクやトラブルを考慮すると、内緒にするより告知義務を伝えた方が結果的にスムーズだからです。 ただ、貸主や買主も心理的瑕疵があったことに気づかなかったケースはあるので自分でも調べるようにしましょう。

心霊現象があれば心理的瑕疵物件になる?

受け手側がそう思えば心理的瑕疵になります。ただ、心霊現象は告知義務には含まれないため不動産屋さんが自らその旨を伝えることは少ないです。
しかしこちら側から聞いた場合は事実を話す義務があるため「前の入居者は心霊現象など心理的瑕疵を理由に退去をしていますか?」など聞いてみましょう。

マンションや一戸建てによって告知義務の定義は変わる?

変わりません。ただ、売買と賃貸など契約の種類によっては告知義務の内容が異なるため注意が必要です。(売買の場合は事案の発生から3年経過しても告知を行う必要があるなど)

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