事故物件とは?定義や告知義務について新ガイドラインを基に解説

公開:2021/09/21
更新:2021/10/12
事故物件とは?定義や告知義務について新ガイドラインを基に解説
事故物件と聞いて、なんとなくネガティブなイメージが浮かぶものの、詳しくは分からないという人も多いのではないでしょうか。事故物件に対する知識がない状態でお部屋探しをすると、「知らず知らずのうちに、過去に人の死が発生した物件に住んでしまっていた」というケースもありえます。 本記事では、国土交通省が2021年10月8日に発表した新ガイドラインを基に、事故物件の定義や告知義務を解説します。事故物件について正しく理解し、安心してお部屋探しをしましょう。

事故物件とは

事故物件とは、入居者が何かしらの原因によって死亡した物件のこと。賃貸物件に限らず、不動産取引全体でこのような物件を「事故物件」と呼びます。「誰かが亡くなった部屋」と聞いて、ネガティブなイメージを抱く人が多いのではないでしょうか。

入居者が何らかの原因で死亡した物件

新ガイドラインの発表前は、事故物件について明確な定義や基準がありませんでした。そのため入居者の死因を問わず、人が亡くなれば一様に事故物件と呼ぶことも…。つまり、事故物件には自殺や他殺、火災による焼死だけでなく、老衰や病死といった自然死までもが含まれているケースがあったのです。

たとえ同じ物件であっても、事故物件と認定するか否かは不動産屋さんによっても異なっていました。事故物件はネガティブなイメージが強く、一度事故物件になってしまうと、入居者を見つけにくくなるだけでなく、家賃も減額せざるをえません。一方で「自然死は日常生活において起こりうるもの」という見方から、自然死は事故物件に含まないケースも多くありました。

「心理的瑕疵」がともなう物件

事故物件とは、「心理的瑕疵(かし)」がともなう物件とも言い換えられます。心理的瑕疵とは、不動産取引をする上で入居や購入の意思を左右させうる、ネガティブな事象のこと。つまり、心理的瑕疵がともなう物件とは、心理的に「ここには住みたくない」と思わせるような、重大な欠陥があることを意味します。気に入った物件であっても、「前の入居者が居室内で自殺した」という事実を聞かされて入居を見合わせる、というのがその典型例です。

事故物件の告知義務とは

不動産取引の仲介業務を担う不動産屋さんには、入居希望者や購入希望者に対して物件の瑕疵を伝える義務が課されています。重要事項説明書に記載の上、その説明の際に伝えるのはもちろんのこと、入居や購入の意思決定をする前にその事実を告知しなければなりません。

仲介の不動産屋さんが告知しないのは違法

事故物件であるという事実を含め、重要事項に該当する事実の告知義務は、宅地建物取引業法という法律で定められています。例えば、仲介の不動産屋さんが事故物件であると知っていたにもかかわらず、入居者確保に不利になるからと、その瑕疵情報を隠して契約をさせることは違法です。こうした行為があった場合、仲介の不動産屋さんは入居者から不法行為に基づく損害賠償を請求されたり、宅建業法違反によって業務の一時停止や情状の重さによっては宅建業の免許が取り消されたりします。

ガイドライン制定前は、告知範囲や期間に定めがなかった

入居者への告知義務が定められていた一方で、ガイドライン制定前は、事故物件の告知範囲や期間に対する明確な定めがありませんでした。業界の商習慣や取引事例、判例に基づいて、不動産屋さんがある程度独自のルールで取り扱っていたのです。

入居募集をしている部屋の中で入居者が亡くなった場合に限定して告知していた不動産屋さんもあれば、共用部分で発生したものまで告知していたところもありました。告知期間についても、不動産屋さんによって考え方は様々。あらかじめ2年や3年というように期間を決めて告知していた不動産屋さんもあれば、事件や事故発生後の入退去の回数で決めていたところもありました。

特に都会でよくあったのが、事故や事件発生後に1人でも入居すれば、たとえその人がすぐに退去したとしても次の入居者募集以降は告知しないというやり方。中には、自社の社員を一時的に住まわせて、告知義務を果たしたことにしてしまうような会社もあったのです。

地方では都会に比べて、周囲の住人の入れ替わりが活発ではありません。そのため事故や事件の記憶が風化しにくく、何年にもわたって告知しているケースも…。アパート内の一室で自殺が発生し、他の部屋の入居者も気持ち悪がって退去。物件全体についたマイナスイメージが払拭されず空き部屋だらけになり、最終的に建物を取り壊した、というような事例も発生していました。

事故物件の取り扱いに関する新ガイドライン

これまで明確な基準がなかった事故物件の取り扱いに対して、2021年10月8日に国交省が新たにガイドラインを制定しました。今後は本ガイドラインが取引時の判断基準として参照される予定です。

参照:国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」

新ガイドライン制定の背景や目的とは

新ガイドライン制定の背景としては、不動産屋さんごとに事故物件の取り扱いが異なっていたことや個別のケースごとに判例が異なっていたことが挙げられます。こうした事象を防ぐために、実際の取引事例や判例を参考にして一定の基準を設けたのが本ガイドラインです。

ガイドラインには法的拘束力はありません。しかしその位置づけは、宅地建物取引業者である仲介の不動産屋さんが不動産取引の実務に携わる上で「判断基準とするもの」とされています。

一般的に、自然死のリスクが高いとされる高齢者の入居は、大家さんに敬遠されがち。特に、単身の高齢者に対してはこの傾向が顕著です。これらを受け、高齢者が賃貸物件へ入居する際のハードルを下げるという目的もあります。

自然死や不慮の事故による死は告知すべき事案から除く

新ガイドラインでは、過去に人の死が発生した居住用物件について、以下に該当する場合はその事実を入居者や入居希望者に告知しなくて良いとしています。

  • 自然死
  • 日常生活による不慮の死

人はいつか亡くなるものであり、自然死の発生は特別なことではありません。階段からの転落や浴室での転倒、誤嚥(ごえん)などの不慮の事故も、日常生活で起こる可能性は十分あります。このように日常生活で当然起こりうる死については、不動産取引時の判断を左右する重要な要素ではないと認められたのです。

ただし、自然死や不慮の事故による死であっても、特殊清掃が発生した場合は例外。入居者の死後、一定期間にわたって発見されなかった際には臭気や害虫を取り除くために、消臭や消毒を含む特殊清掃が必要になります。この事実は入居者の意思決定を左右すると考えられ、事故物件として取り扱われるのです。

したがって、新ガイドライン制定後における事故物件とは、自然死や不慮の事故死以外の死や特殊清掃が必要になる死が発生した物件を指します。

ベランダやエレベーターなどの共用部分も告知対象

アパートやマンションなどの集合住宅では、ベランダやエレベーターなど、日常生活を送る上で使用する共用部分で起こった事故や事件についても告知対象としています。他方、同じ建物内の別部屋で起こったものや日常生活で通常使用しない共用部分で発生したものについては告知対象外です。

ガイドライン制定前は、共用部分で発生した事故や事件はその経過期間やその後の入居者の人数に問わず、一切告知されないケースもありました。しかし、日常的に使用する場所における事案の有無は住み心地にも影響を与えることから、告知対象として明記されています。

なお、ベランダは専有部分と思われがちですが、正しくは共用部分に該当します。ベランダが属する部屋(専有部分)の入居者に対して専有使用権が与えられているために、ある程度自由に使用できるのです。

告知期間は事案の発生からおおむね3年間

事故物件である旨の告知期間は、人の死が発生してからおおむね3年間。ただし、この期間は賃貸物件のみに適用されます。売買物件については取引事例や判例不足から、告知期間は定められていません。 なお、特殊清掃が行われた場合の告知期間は、その人の死が「発覚」してからおおむね3年間です。

一方で、事案の発生や発覚からの経過期間や死因にかかわらず、以下に該当する場合はたとえ告知期間を過ぎていても、仲介の不動産屋さんから入居者や入居希望者に対してその事実が告げられます。

  • 入居者及び入居希望者から問い合わせがあった場合
  • 社会的な影響の大きさから、入居者及び入居希望者が把握しておくべき特段の事情があると認識した場合

つまり、経過期間や死因にかかわらず人の死が発生した物件に住みたくない場合は、不動産屋さんに自らたずねることで過去の事故有無を確認できるのです。ただし、仲介の不動産屋さんが大家さんや管理会社に問い合わせた結果、不明であるとの回答を受けたり、無回答であったりした場合は、その旨がそのまま伝えられます。

事故物件を契約しないためにできること

事故物件に対する考え方は人それぞれです。中には、特に事故物件も気にならず、むしろ家賃の安さを魅力に感じて入居を決める人もいます。

一方で、事故物件には入居したくないと考える人は少なくありません。新ガイドラインは制定されましたが、事故物件に入居しないよう自分自身でも気をつけたいという人や経過期間にかかわらず人の死が発生した物件には住みたくない人は、以下のポイントを押さえてお部屋探しをしましょう。

「瑕疵あり」「告知事項あり」の記載がないか確認する

物件情報の備考欄や特記事項に「瑕疵あり」「告知事項あり」の記載有無は要確認ポイントです。入居者にとって心理的な瑕疵がある場合のほか、その物件に住む上での物理的瑕疵や環境的瑕疵がある場合などに、これらが記載されます。

物理的瑕疵物件とは、地盤沈下が進んで建物が傾いていたり、耐震強度に問題があったりと、建物そのものに欠陥がある物件のこと。環境的瑕疵物件は、物件の周囲に火葬場や墓地などの「嫌悪施設」があるものを指します。嫌悪施設には、暴力団事務所や刑務所、風俗店なども含まれます。

心理的瑕疵に限らず、何かしらの瑕疵があるという事実は、入居者にとってネガティブな情報です。一方で、インターネット(以下、ネット)上の物件情報欄には詳細な内容までは記載されていないのが一般的。そのため、これらの記載がある場合は必ず問い合わせをして、詳細を確認しましょう。

条件が良すぎる物件に注意する

他の物件に比べて明らかに条件が良い、家賃が安いという場合は、注意が必要です。特に、近隣の似たような条件の物件に比べて家賃が2割から3割程度、またはそれ以上に安くなっている場合は、それ相応の理由がある可能性も否めません。条件が良いにもかかわらず、建物全体で空室が多い場合も注意しましょう。

条件が良い物件であれば比較的早く入居者が決まることが多く、早々に掲載終了となってしまうのが一般的。ネット上に掲載しない場合もあります。

不自然な修繕箇所がないか内見時に確認する

内見時には、物件内に不自然な修繕箇所がないか確認しておくのも大切です。例としては、居室内のフローリングや浴室内の一部のみが新しくなっている場合が挙げられます。明らかに色や新しさが違う部分を見つけた際には、修繕履歴やその理由をねてみると良いでしょう。

テレビや新聞などに出るような事件があった物件の場合は、外壁の塗装をし直して外観を変えたり、物件名を変えたりしていることもあります。外壁塗装や名称変更はオーナーチェンジにともなって行われる場合もありますが、少しでも気になる点がある場合には、不動産屋さんにねておくと安心です。

不動産屋さんに前の入居者情報をたずねる

上記のような気になる点がある場合は、仲介の不動産屋さんにお願いをして、可能な範囲で前の入居者情報を管理会社や大家さんにたずねてもらうのも良いでしょう。当然、個人情報やプライバシーに関わる内容は伝えられませんが、居住期間や転居理由、属性など、大まかな内容は教えてもらえる可能性があります。

前の入居者が退去してからの空室期間が長い場合は、その理由をたずねてみるのもオススメです。事故物件でない場合も、長期間入居者が決まらなかった理由によっては、入居を思い留まるかもしれません。

ネットで調べる

事故物件情報は、ネット上でも手軽に調べられます。「大島てる」というサイトが有名で、いつ頃どのような事案が発生したかという情報を地図上で確認することが可能です。ただし、居室番号までは分からないことや、実際に発生した全ての情報が掲載されているわけではないことを覚えておきましょう。

また、情報源は一般ユーザーの投稿によるものです。そのため、全ての情報が正しいものとは言い切れません。参考までに調べつつ、その上で不動産屋さんにたずねることをオススメします。

まとめ

2021年10月8日に国交省が人の死の告知に関する新たなガイドラインを発表しました。以後は、過去おおむね3年間において自然死や不慮の事故死以外による死や特殊清掃が必要になる死が発生した物件が、事故物件として入居者や入居希望者に告知されます。

本ガイドラインには法的拘束力がないものの、今後は各不動産屋さんがこのルールに準じて事故物件を取り扱うとされています。特殊な事情があるものを除けば、このルールが判断基準となるのです。入居者自身もこのルールや今回ご紹介した内容を確認すれば、「知らず知らずのうちに、過去に人の死が発生した物件に住んでいた」ということを防げるでしょう。

OHEYAGO(オヘヤゴー)ではお申込みをいただく時点で、管理会社や大家さんに心理的な瑕疵がないかを確認いたします。安心してご利用ください。

この記事を書いた人
中條 ふみ
OHEYAGO宅建士ライター
中條 ふみ
銀行とメーカー勤務を経て、夫婦で不動産賃貸経営をする子育てライター。これまでに中古アパート、一棟ビル、戸建の売買や賃貸を経験。保有資格は、宅地建物取引士と2級FP技能士。 自身の経験を活かしながら、女性目線を盛り込んだ不動産関連記事や取材記事を多数執筆。
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