賃貸の入居審査に落ちる確率は?落ちやすい人の傾向もご紹介
入居審査とは
まずは賃貸契約における入居審査について、基本的な予備知識から押さえていきましょう。
入居審査の必要性
賃貸物件とはその建物を所有している個人・法人が、入居希望者に部屋を貸し出すものです。物件を貸し出した後は向こう数年間、契約を結んだ入居者が住み続けることになります。住まいは人の生活に直結する場所であり、そこでの過ごし方は人それぞれです。しかしそれが近隣住民の迷惑になってしまうようであれば、所有者としても頭を悩ませてしまうでしょう。また、賃貸物件は所有者にとって家賃という大きな収入源となります。入居者が滞りなく家賃を支払ってくれるかどうかは、所有者の経済事情にとって重要なポイントなのです。そのため、入居者の人間性や経済力について前もって審査を行います。審査にかかる日数は一般的に3日~1週間程度ですが、不動産会社や保証会社の営業日によってはもう少し時間がかかることもあるので注意が必要です。引越しシーズンと言われる1~3月も入居審査が長引く傾向があるので、ゆとりを持ったスケジュールを組みましょう。
入居審査は誰が行うのか
入居審査を行う主体には「大家さん(あるいは管理会社)」「不動産会社」「家賃保証会社」の3パターンが考えられます。この中でどれか1つの入居審査に通過すれば良い訳ではありません。必要となる審査の組み合わせは物件によって異なるので注意しましょう。賃貸契約の場合、入居者が家賃を支払えなくなった場合の保険をかけておくのが一般的です。かつては入居者の身内を「連帯保証人」に立てるのが一般的でしたが、近年はその役割を家賃保証会社が担うケースが増えています。家賃保証会社としては家賃の立替払いと行った際、入居者から債権を回収する必要があるため審査を行っておく必要があるのです。なお、連帯保証人か家賃保証会社のどちらかだけで契約できる物件もあれば、両方が必要な場合もあります。
入居審査に必要な書類・情報
入居審査は申込者からの深刻や公的書類の内容を基に行われます。細かい深刻内容はケースバイケースで変わることがありますが、一般的には以下のような情報の提供が求められるので覚えておきましょう。
・住所
・氏名
・年齢(生年月日)
・連絡先
・勤務先 ・年収
・勤続年数
上記の情報は不動産会社に提出する申込書に記入するものであり、基本的には必須と言って良いでしょう。場合によってはこれらに加えて次のような公的書類の提出が求められることがあります。入居審査時に提出しなくても、審査通過後の正式契約時に必要になることが多いです。
・住民票(発行から3ヶ月以内の原本で入居者全員のもの)
・身分証明書
・所得証明書
・印鑑登録証明書(発行から3ヶ月以内の原本)
なお、連帯保証人を立てる場合は入居希望者と同様の情報を記入した上で、保証人の収入証明書・印鑑登録証明書・同意書の提出を求められるケースが多いです。
入居審査に落ちる確率
入居審査について、一般的にはどの程度の通過率なのか気になるという人も多いでしょう。2020年9月、東京大学空間情報科学研究センターでは「民間賃貸住宅市場における入居審査と家賃滞納」という調査結果を公表しています。同資料によればサンプルとなった入居審査全体の通過率は82.8%でした。つまり審査に落ちる確率は17.2%なので、10組のうち1~2組が弾かれていることになります。単身世帯の通過率は83.6%で、世帯年収が高い傾向にある夫婦世帯は88.7%という結果になりました。なお、万が一入居審査に落ちた場合でも原則的にその理由は教えてもらえないので留意してください。
入居審査の評価項目
入居審査の基準は法律などで決められている訳ではなく、大家さん・不動産会社・保証会社などが独自のチェックポイントを設けています。ただし審査時の評価項目には共通しているものも多いです。ここでは入居審査における一般的な評価項目について述べていきます。
収入額
入居審査において重要なのは「入居者に家賃を支払い続ける能力があるかどうか」という点です。家賃の金額に対して余裕のある収入があれば、審査において信用してもらえる可能性が高くなります。明確な基準はありませんが、一般的には「家賃は手取り月収の3分の1」が理想とされています。「民間賃貸住宅市場における入居審査と家賃滞納」においても収入が家賃の1倍以上2倍未満である場合は通過率56.3%でした。これに対して2倍以上3倍未満になると84.6%と大きく通過率が上がり、3倍以上4倍未満では87.1%となっています。
雇用形態
入居者の支払い能力を判断する際には、雇用形態もチェックされることが多いです。入居審査でポイントが高い雇用形態は、収入や雇用状態に安定感のある正社員です。契約社員や派遣社員であっても、収入や雇用の実情が正社員と同等であれば入居審査において大きなハンデとなることはありません。アルバイトやパートは時給制が一般的で、シフト状況によって月ごとの収入が変化しやすいため審査はやや不利とされています。単発勤務が中心となる派遣スタッフの場合も、厳しい審査になるでしょう。
人間性
入居希望者の人間性は家賃の支払いだけでなく、近隣住民と良好な関係を築けるかどうかにも大きく影響するため入念にチェックされています。例えば提出した書類や申告内容に嘘がある、会話中に横柄な態度を取っているといった場合は審査通過の確立が大きく下がるでしょう。不動産会社での振舞いは大家さんや管理会社にも伝わっているので、収入面に問題がなくても人間性が原因で審査に通らないことがあります。
反社会的勢力
入居希望者が反社会的勢力(暴力団組員など)と判明した場合、原則的に不動産会社や大家さんが部屋を貸してくれることはありません。反社会的勢力は政府や各自治体によって排除が進められており、不動産業界においてもその流れが大きくなっています。
連帯保証人
入居者本人だけでなく連帯保証人のステータスも、入居審査時に重要視されているポイントと言えます。連帯保証人は入居者の代わりに家賃を支払う可能性がある人物なので、部屋を貸し出す側としては支払い能力がなければ困るのです。
入居審査に落ちやすい属性(人)
社会的な属性は入居希望者の特性を掴む1つの指標とされています。「この属性は絶対に審査が通らない」という訳ではありませんが、基本的な傾向として次のような審査に落ちやすい属性があるのも事実です。
無職
無職の人はそれだけで収入面で不安があると見なされ、入居審査が不利になる場合が多いです。転職活動などで一時的で無職になっている場合はその旨を伝えたり、十分な貯金があることを証明したりすれば審査通過の可能性は高まります。
水商売
水商売は頑張り次第で高収入が実現できる一方で、月収が安定しにくいとされています。数年程度で転職する人も多く比較的勤続年数が短くなりがちです。帰宅が深夜・早朝に偏りがちで、活動時間が一般的な生活サイクルから外れる傾向にある点も懸念されます。
自営業
取り扱う商材や業種にもよりますが、自営業やフリーランスとして収入を得ている個人事業主も入居審査に苦労する属性です。個人事業主は毎月決まった給与を受け取れる訳ではなく、定期的に取引があるクライアントや優良顧客が居なければ収入が安定しにくいと判断されます。
高齢者
定期収入が年金のみの高齢者は、入居を希望する物件家賃と釣り合いが取れないケースが多いです。定職に就いていたとしても病気やケガといった健康リスクの大きさや、連帯保証人の立てにくさから入居審査に落ちやすいと言われています。
成人の有無
日本では2022年4月から成人年齢が18歳未満に引き下げられたため、17歳までが未成年として扱われるようになりました。賃貸契約において未成年者が自分だけで契約することはできません。前提として未成年者が賃貸契約を結ぶには法定代理人、つまり保護者の同意が必要です。親権者に契約を結んでもらい、実際に入居するのは未成年者というパターンが審査に通りやすいとされています。自分の名前で契約する場合は安定収入の証明、親権者の連帯保証人などが審査通過のポイントと言えるでしょう。
入居審査に落ちやすい特徴
社会的な属性が審査に通りやすいものでも、個人的なステータスが理由で入居審査に落ちるケースは珍しくありません。以下のポイントに自分が当てはまっていないかチェックしてみましょう。
過去に滞納歴がある
家賃は毎月支払う必要がある費用なので、入居審査においては継続的な支払い能力・支払いの意思があることが重要となります。この2つの点を見極めるために、入居希望者の「滞納歴」がチェックされることが多いです。電気・ガス・水道といったライフライン系、スマホの利用料金、クレジットカードやローンなど様々な支払い履歴が参照される可能性があります。支払いが多少遅れたことがある程度なら問題ありませんが、長期滞納や債務整理は信用情報がブラックリストに登録されるため入居審査への影響も大きくなるので注意しておきましょう。
勤続年数が短い
勤続年数の長さは安定収入の有無に直結するポイントの1つなので、勤続年数が短い人は必然的に入居審査に落ちやすくなります。履歴書を提出する訳ではないので、チェックされるのは申込時の勤め先のみです。転職回数は審査に考慮されないので、自分に合った仕事を探すために職場を転々としている場合でも安心してください。勤続年数の長さは最低でも収入証明書となる源泉徴収票が交付される1年間以上は欲しいところでしょう。
対応に問題点が多い
賃貸物件を紹介してくれる不動産会社との直接的な関わりは短い間ですが、契約における重要な連絡や書類のやり取りが多いため密度の濃い付き合いとなります。そのため不動産会社とのやり取りの中で不信感を買ってしまうような振舞いが多いと、入居審査に落ちやすくなるので注意が必要です。例えば提出書類に不備が多い・文字が殴り書き・著しく電話連絡が取りにくい・身だしなみが極端に不潔といったケースが該当します。
連帯保証人が身内以外
いざという時にはスムーズな支払いが必要となるため、連帯保証人は原則「入居希望者から見て二親等以内の親族」しか指定できません。一定の条件を満たしたり特別な事情があったりする場合は、友人・知人を連帯保証人に指定することが認められることもあります。しかし親族以外の連帯保証人は入居審査において信用度が低くなりがちである点には十分注意しましょう。
入居審査に通過しやすくするには
入居審査に絶対的な攻略法は存在しませんが、審査通過率を底上げするためにできる取り組みはあります。ここでは審査通過率の向上が期待できる対策を紹介するので、自身の状況を考慮して必要となりそうな取り組みがあれば実践してみてください。
収入と家賃のバランスを取る
先に述べた通り、家賃は手取り月収の3分の1までが理想とされています。これは世間一般だけの認知ではなく、不動産業界においても1つの基準とされているポイントです。条件面を優先するとどうしても家賃が高くなりがちですが、手取り月収とバランスが取れないようであれば申込みは避けるのが無難と言えます。住まいの設備に妥協したくない場合は駅から少し遠い立地を狙う、駅から近いなら広さを諦めるなど「住まい探しの優先順位」を決めておくと納得できる部屋が見つかりやすくなるでしょう。
貯金を作っておく
入居審査では月収ではなく貯金額で支払い能力を判断してもらうパターンもあります。収入面に不安がある場合は、貯金を作ってから住まい探しを始めるのがおすすめです。ただし一般的に預貯金審査のボーダーラインは家賃の24ヶ月分(2年分)と言われているので、比較的まとまった金額が必要になります。例えば家賃6万円の物件に預貯金審査で申し込む場合は、144万円の貯金が必要です。
保証会社は独立系が狙い目
家賃保証会社を利用する場合は、利用できる会社の種類に着目してみましょう。保証会社は大きく分けて「信販系」「協会系(LICC・LGO)」「独立系」の3種類があります。信販系はクレジット会社やローン会社が運営しており、この3つの中で最も審査が厳しいとされています。協会系は複数の保証会社がデータを共有しているパターンで、協会内の保証会社で審査に落ちると同一協会に所属する他の保証会社での審査も大きく不利になるので注意しましょう。最も審査がゆるいとされているのは、保証会社が独自の基準のみで審査を行う独立系の保証会社です。利用できる保証会社は物件や不動産会社によって異なりますが、審査が不安な場合は正直に相談してみましょう。
審査に通りやすい物件を選ぶ
数多くの物件情報を取り扱う不動産会社のデータベースには、審査に通りやすいものがあります。例えば空室が多い・空室期間が長い物件は大家さんが早く入居者を決めたがるため、比較的審査に通りやすいです。また、不動産業者からしても入居希望者が審査に通れば自社の利益に繋がるため、強くおすすめしてくれる物件も審査自体には通りやすい可能性が高いでしょう。ただし審査に通過しやすいということはそれなりの理由が考えられるため、その理由を聞いて自分で納得できるかどうか吟味するようにしてください。
不動産業界の繁忙期を避ける
不動産業界の繁忙期である1~3月は多くの人が部屋探しを行うため、不動産会社が1組にかけられる時間が限られています。入居審査に落ちてしまいそうな要素を抱えている状況では、少しでも不安を取り除いてから申し込むことが大切です。じっくり相談に乗ってもらうためには、不動産会社が忙しい時期を外すと良いでしょう。また、繁忙期を過ぎた4~6月あたりに空いている物件は、大家さんや管理会社が入居者探しに焦っている可能性があり入居審査も通りやすい傾向があります。
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