賃貸物件は審査が通ってからキャンセルできる?違約金の有無などとあわせてご紹介
契約前なら審査通過後もキャンセル可能
賃貸物件は申し込みや審査が通過した後でも、賃貸借契約書を締結していなければキャンセルができます。賃貸契約書にサイン・捺印をする前のキャンセルは、ペナルティはなく、申込時に支払った申込金や預かり金は返還されます。契約成立前の場合は、契約に反したことを理由として発生する違約金は請求されません。
一般的に内見した賃貸物件に入居したい場合、不動産会社に申し込みをします。賃貸物件に入居したい意思表示として、申込者は1万円~家賃1ヵ月分程度の預かり金を不動産会社に渡すことがあります。金額設定は不動産会社によって異なります。入居申込書を提出後、提出された申込書の内容を大家や管理会社が確認して、入居審査を行います。入居審査を通過すれば、申込者に重要事項説明をして契約する流れです。申込者が重要事項説明の書面に書かれていることを了承し、署名捺印をして、正式な賃貸契約を結びます。
重要事項説明とは、宅地建物取引士の資格を持った担当者が、契約物件の仕様や規約についての重要事項を申込者に説明をすることです。重要事項説明は書面を用いて、口頭で行われていましたが、オンラインで完結するケースも増えてきました。気になることがあればこの時点でしっかり確認しておきましょう
多くの不動産会社では、賃貸借契約書へサイン・捺印をした時点で契約が成立するとしています。しかし、法的には諾成契約(だくせいけいやく)と言って、双方の合意が取れていれば、契約書へのサイン・捺印の有無に関わらず、口約束だけで契約は成立します。「入居したいので申し込みます」と言って申込書を提出し、管理会社、大家が入居を承諾した時点を契約成立とする場合があるので注意が必要です。審査通過後、「入居するので手続きを進めてください」と口頭で意思表示した時点を契約成立とする場合もあります。どの時点で契約成立とするかは、不動産会社によって異なります。申し込みをするときに、くどくても納得できるまで契約成立の定義を確認しておく方が安心です。
悪質な不動産会社が、知識のない申込者に「キャンセルはできない」と迫ることがあります。会社側は審査の手続きや重要事項説明の準備などに時間もお金を費やし、労力をかけているので、「預かり金が返金できない」と言って契約するよう説得してくるケースもあります。トラブルを避けるためにも、申し込みの時点で、やむを得ないキャンセルの取り扱いについて、不動産会社に確認しておくことをおすすめします。会社側が「あなたのしていることは、大家さんなど多くの関係者に迷惑をかけている」いう高圧的な姿勢でも、お詫びしつつ、「契約は成立していません。キャンセルします。預り金をすぐに返却してください」ときっぱり伝えましょう。
不動産会社や管理会社に申込金・預り金を支払う際には、申込者は領収書の代わりになる預り証を受け取ります。契約成立前にキャンセルする際、申込者は不動産会社や管理会社に預り証を提出し、申込金・預り金の返還がされるので、必ず保存しておきましょう。「預かり証を郵送すれば返金する」などと言い、申込金・預り金の証拠を申込者から取り上げる非常に悪質なケースが存在します。絶対に郵送等で送らずに、手元に保管して、返還時に提示できるようにしてください。
申込金・預り金の返還がされない、キャンセル料として金銭を請求されたときは断固拒否しましょう。もし金銭を請求されたら、請求書を発行するよう求めると、違法な請求だと理解しているため、それ以上金銭を要求してこないでしょう。そもそも申込金・預かり金とは契約金ではなく、不動産会社や管理会社が契約締結まで一時的に預かっているだけです。法的には、申し込みの時点で不動産会社や管理会社に支払わなければならない物ではありません。契約成立前に申込者がキャンセルした場合、申込金・預り金は返さなければならない、と宅地建物取引業法施行規則で定められています。不動産会社や管理会社が申込金・預り金の返還を拒んだら、宅地建物取引業法施行規則違反です。トラブルになった場合は、全国宅地建物取引業協会連合会や全日本不動産協会に相談してください。ほとんどの不動産会社や管理会社はどちらかに加盟しており、協会は問題がある会員企業に対して調査や除名も含めた処分を下します。
注意したい点が、不動産会社や管理会社を通さずに、大家と直接やりとりをして借りる物件は、キャンセルできない場合があります。宅地建物取引業法が当てはまらず、書面での署名・捺印が無くても契約が成立する可能性があるからです。取引態様が「貸主」の物件は、大家から直接借りる物件なので注意しましょう。思わぬトラブルの発生を避けるためにも、より冷静な判断が必要となります。
キャンセルの仕方
契約成立前ならキャンセルは可能ですが、不動産会社や管理会社、大家は書類を用意し、準備に時間やお金をかけています。多くの人に迷惑がかかることだけは忘れてはいけません。大家も入居者が見つかった、と胸をなでおろしているかもしれません。できれば契約前に行う「重要事項説明が終わるまで」にキャンセルすれば、双方負担が少なくて済みます。契約前でも契約後でも、キャンセルの連絡はなるべく早く正直に伝えて、相手にかける負担を最小限に抑えるようにしましょう。時間が経つほど、関係者にかける負担は大きくなってしまいます。心苦しいからと連絡を引き延ばしていても、誰の得にもなりません。
連絡手段は電話での連絡がベストです。電話は謝罪をしている気持ちが伝わりやすく、タイムラグが発生しません。会社の営業時間外や定休日でも、担当者の携帯に連絡してみましょう。担当者が見落とすかもしれないメールやLINEはタイムラグが発生します。どうしても日中に連絡ができないなどの理由であれば、メールも選択肢になりますが、半日経っても返信がなければ、再度メールを送るか電話をし続けるなどして、できるだけ早く連絡に気づいてもらう工夫が必要です。
電話がつながったら、キャンセルしたい理由を明確に伝えて謝罪し、どのように手続きを進めるべきか担当者に相談します。理由のないキャンセルは不動産会社や管理会社、大家からの印象が悪くなります。申し込み後のキャンセルをくり返すと、今後物件を紹介してもらえない可能があります。なお、申し込み後にキャンセルしたことが理由で、ブラックリストに入ることはありません。
例外として「会社側に強引に申し込みさせられた」という理由で、キャンセルする場合はあえてメールで連絡する方がよい場合があります。会社側が「キャンセルは書面でしかできないので、店舗に来てください」と言い、強引に契約まで詰め寄ってくる可能性があるからです。
よくあるキャンセルの理由
賃貸物件をキャンセルする人は少なからず存在します。自分だけではありません。
よくあるキャンセルの理由は「急に転勤がなくなった」「急遽会社で別の地域への異動を言い渡された」「引っ越す必要が無くなった」「引越しを家族から反対された」など会社や家族のような周囲の環境によるものです。自分ではどうすることもできない突発的な周囲の環境の変化により、やむを得ずキャンセルすることになった、部屋を探す必要がなくなったと正直に謝罪しましょう。
「他に良い条件の物件を見つけた」「ほかの物件で入居が決まってしまった」など、申し込み後に、より条件の良い別の賃貸物件が気になってしまったというケースもあります。「ほかの物件で入居が決まってしまった」と申し出ると、「差し支えなければ、ちなみにどちらに決まりましたか?」などと突っ込まれることがあります。答えなくてもよいですし、答えるとしても大まかなエリア位をさらっと伝えるだけで、物件名は言わなくてもよいです。
賃貸物件を契約するというのは、今後の生活にも関わる重要な選択です。自分が納得のいく物件を選ぶのは当然のことです。契約前ならキャンセルできるからと言って、気になる物件に手あたり次第に申込書を出しておくというのはお勧めできません。申込書を出すということは、「これ以上、条件の良い物件は出てこないだろう。ここに入居したい」という強い意志を持ち、提出以降はむやみに物件探しをしないくらいの覚悟があることが前提でしょう。突発的な事項や偶然の事象で、やむを得ないという時は誠心誠意謝罪すれば相手方も理解して、トラブルに発展するリスクを減らすことができます。
新生活が始まる季節や、人気のある物件はすぐに埋まってしまうため、焦りを感じることもあるでしょう。「とりあえず申込書だけでも出してみませんか?」「契約前だとキャンセルできますよ」などという営業トークにのせられてしまうと、いざキャンセルしたいと思ったときに心苦しさを感じ、相手側とトラブルになって自身が精神的に打撃を受ける状態になってしまっては、労力をすり減らすだけです。
キャンセルの理由は、「部屋を探す必要が無くなった」と明確に伝えた方が良いです。「他に気になる物件がある」「今じゃなくてもいいかな、と思い始めたので」「よく考えたら家賃が高いかなと思ったので」などとあいまいな理由だと、経験豊富な不動産会社や管理会社側はまだ自社で契約してくれる可能性があると期待して、他の物件を紹介し、今日中にでも内覧を勧め始める場合があります。意思が変わらないことを筋道立てて説明しないと、「迷っているお客様のために力になりたい」と逆に営業がヒートアップすることがあります。
契約後にキャンセルするとどうなるのか
賃貸借契約書を締結後にキャンセルをする場合は、入居していなくても解約扱いとなります。入居しなくても、いかなるの事情があっても、契約書に記載している内容に従うことになります。「損害賠償額の予定または違約金に関する事項」として、解約に関する違約金の額や内容は重要事項説明書に明記されています。違約金は賃料の2~3か月分程度が相場です。重要事項説明を受ける際にも必ず確認して、しっかりと賃貸契約書を読んでからサインをしましょう。「賃貸契約書にサインしても、クーリング・オフ制度を使ってキャンセルできる」と思われがちですが、不動産の賃貸物件の場合は、クーリング・オフ制度の適用外であるため、契約を解除することはできません。
契約後のキャンセルは解約扱いになるので、物件を退去する際の精算と同じ扱いになります。大家に対しての礼金、仲介手数料、翌月分を前月までに支払うという契約の場合の前家賃は返還されないと考えましょう。多くの不動産会社は、解約する場合は退去日の1ヶ月前までに申し出るよう求めています。支払い済みの初期費用から少なくとも1ヶ月分の家賃は差し引かれ、初期費用のほとんどが返金されません。その他に鍵の交換料、清掃料などを入居時に徴収された場合も返還されません。部屋を一度も使用していないので、敷金は戻ってくる可能性はあります。違約金等の金銭債務の支払いに充当後、残額があれば返還されるでしょう。火災保険料は、自分で保険会社に連絡して事情を話し、未経過分の費用は戻ってくる可能性があります。
違約金等を支払わない場合には、大家はまず敷金をキャンセル料に充当して回収するでしょう。敷金を充当しても、なお違約金等の残額がある場合には、大家は内容証明郵便を送付してくる可能性が高いです。内容証明郵便を送付しても、違約金等を任意に支払わないと判断された場合は、裁判所を通じて支払督促する法的手段に入ります。裁判所から違約金等の支払いを命ずる書面が送付されてきます。異議申し立てをしない場合は支払督促に基づき、財産に対する強制執行の対象になります。異議申し立てをした場合は、訴訟に発展します。
物件に暮らしていないのに家賃を支払うことに、納得のいかない人もいるでしょう。しかし、不動産会社や管理会社、大家は再度入居募集することになり、契約が成立したからと他の希望者を断っている可能性もあります。無駄にキャンセルを増やさないためにも、書類を安易な気持ちで記入せず、自分の納得のいく物件探しを慎重にすすめていきましょう。
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