おとり物件にむかつく!仕組みと見分け方を知って快適に内見する方法を解説
おとり物件とは
おとり物件の概要
おとり物件とは、実際には取引できない、取引する意思がないにもかかわらず、あたかも取引できるかのように装い、顧客を誘引するための手段として用いられる物件のことです。具体的な物件の種類として以下の3つがあげられます。
・実際には存在していないため取引できない物件
・実際に存在してはいるものの、契約が決まったなどの理由で取引対象となりえない物件
・実際に存在しており空室ではあるものの、広告しておきながら他の物件に誘導するなど取引の意思がない物件
おとり物件との接点としては、不動産業者の店頭や広告、住宅探しのポータルサイトが一般的と言えるでしょう。おとり物件を使った顧客を誘引するための表示や広告をおとり広告と呼んでいます。
おとり物件の割合
おとり物件が有害であることは論をまちませんが、どの程度の割合で使われているのかが気になるところです。多ければ多いほど被害に遭う可能性が高まります。2022年9月に首都圏不動産公正取引協議会が公表した資料によれば、同年5月から6月にかけて4つのポータルサイトに掲載された賃貸物件の広告のうち、契約済のおとり物件である可能性が強く疑われた物件は378物件でした。その8.7%にあたる33物件がおとり物件として認められています。また、疑いのあった物件の掲載事業者33社中36.4%の12社におとり広告が認められました。
ちなみに、調査時にポータルサイトに掲載されていた広告の全数と、全体に対する割合については記載がありませんでした。
出典:公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会「インターネット賃貸広告の一斉調査報告(第11回)」
- OHEYAGOの場合
OHEYAGO(オヘヤゴー)は管理会社が登録した物件情報とリアルタイムに連動したデータベースを元に、システムが自動で物件情報を掲載しています。そのため、募集が終了した物件は自動で掲載終了になり、おとり物件が存在しない不動産賃貸サイトを実現しています。※1 集客のために掲載されたままの募集終了物件もありません。自分のペースで物件探しを進められるOHEYAGO(オヘヤゴー)で、お気に入りの物件を見つけてみてください!
※1|募集終了となった後、管理会社が登録している物件情報を更新するまで、また、システムがOHEYAGO(オヘヤゴー)に更新された物件情報を反映するまでの間は、OHEYAGO(オヘヤゴー)に募集終了となった物件情報が掲載されている場合もございます。
おとり物件は違法
おとり物件を使って顧客を誘引する表示をすることは違法です。不動産取引を行う宅地建物取引業者(不動産業者)について規定する宅地建物取引業法の第32条では、次のような表示が禁止されています。 ・著しく事実に相違する表示 ・実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示
まず、おとり物件は釣り物件であり契約できないか契約意思のない物件です。おとり広告では、契約できるかのように見せかけており、実際に契約させようとする物件とは別の物件であることから、宅地建物取引業法の第32条違反です。違反に対する罰則は、同法第81条第1号により6ヶ月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金で、併科されることもあります。
また、不当景品類及び不当表示防止法(以下、景品表示法)第5条には不当な表示の禁止が規定されています。やはり、実際のものよりも著しく優良であったり有利であったりなどと、一般消費者を誤認させるような表示が規制対象です。違反に対しては、同法第7条で内閣総理大臣による措置命令が、第8条で課徴金の納付命令が規定されています。
景品表示法に関連した不動産業界のルールに「不動産の表示に関する公正競争規約」があります。規約の第21条でおとり広告を禁止しており、違反した業者に対しては公正取引協議会が警告または違約金を課すことが可能です。同規約第27条第1項の規定により違約金の額は50万円以下です。
出典:不動産公正取引協議会連合会「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則」
なぜおとり物件は存在するのか
店舗を持つ不動産屋は集客が全て
不動産屋、不動産業者と言えば、駅前や街中に構える店舗をイメージする人も少なくないでしょう。店舗型の不動産業者にとっては店に入ってくる顧客に物件を紹介して仲介手数料を稼ぐことが重要であり、集客が全てと言えます。とは言え、不動産業者が取り扱える物件はどこでもほとんど同じです。したがって、店舗自体に大きな特徴や魅力、画期的なサービスがあれば別ですが、そうでなければ他店との差別化は難しく集客は容易ではありません。そこで、手っ取り早く顧客を誘引する手段として、魅力的なおとり物件を使う業者が現れます。利用されるのは実在する物件と架空の物件だけでなく、その中間とでも言うべき、実在する物件の間取りや設備などを偽っている物件まで様々です。
おとり物件の判断が難しい
いくらおとり物件が魅力的だとは言え、簡単に発覚してしまうようでは使おうという気にはなりにくいでしょう。常に問題視されるほど横行している背景には、おとり物件の判断が難しいという事情があります。実在しない架空の物件であれば、故意であることは明白です。しかし、実在しており募集していた物件については不動産業界に特有の事情が大きく関係することにより、判断を難しくしています。同じ物件を複数の不動産業者が扱っているにもかかわらず、情報の伝達手段が電話やFAXというケースが珍しくないことです。
電話やFAX頼りになっていることにより、情報がリアルタイムでアップデートされにくい状況があります。他社で契約が決まったことを知らなければ、結果としておとり物件のようになってしまうケースが生じても不思議ではありません。募集が終わったことを知らないで営業を続ける状況に問題がないとは言えませんが、少なくとも故意によるおとり物件とは言えないでしょう。ただし、本当に知らなかったのかどうかはわかりません。また、ポータルサイトの掲載情報には更新のタイムラグが存在します。タイムラグというには長すぎる期間更新されず、おとり広告状態になっている場合についても、故意だけでなくうっかりミスなどのケースが考えられるなど、故意かどうかを外部から判断することは困難です。
おとり物件の特徴
おとり物件は釣り物件とも呼ばれるように、顧客にとって魅力的に見える物件となっています。具体的には以下のような点がおとり物件の特徴です。おとり物件の見分け方としても使えます。 #相場と比べて家賃が極端に安い 相場よりも極端に家賃が安い物件は多くの人の目を引きます。そのため、おとり物件として使われやすい特徴です。
優良物件にもかかわらず家賃が高くない
優良物件に決まった定義があるわけではありませんが、周辺の物件よりも築浅で見栄えや設備が優れている、閑静で治安の良い地域に建っている、駅や公共施設、商業施設などへのアクセスが良いといった条件があれば、顧客の注目を集めやすいと言えます。このような物件は人気になりやすく、家賃が多少高くても構わないと考える人も少なくないでしょう。家賃が相場と比べて高くない時点で、おとり物件の可能性があります。さらに、優良物件であるにもかかわらず相場よりも極端に安い場合は、訳あり物件かおとり物件の可能性が大です。
現地集合ができない
部屋を探すなら実物を見てみたいと思うのは自然なことです。そのために内見があります。内見できる物件であれば、現地集合も可能なはずですが、現地集合ができない物件は要注意です。物件が実在するかしないかにかかわらず、おとり物件を見に行かせずに別の物件をすすめようとしている可能性があります。
物件の情報が少なすぎる
キャッチコピーが魅力的なものである反面、肝心の物件情報が少なすぎる場合は要注意です。住所が途中までで物件名が明かされていない場合は、おとり物件の可能性を考えます。
長期間同じ物件が広告されている
いつ見ても同じ物件が広告掲載されている場合、おとり物件の可能性があります。値下げされているなどの変更点があれば、入居が決まらないためだとも考えられますが、まったく同じ内容なら注意が必要です。
実際におとり物件に騙されてしまったケース
有給を使って内見予約をしたのに店舗に行ったら募集終了したと言われた
おとり物件に騙されたケースの中で、予約した内見の前に募集終了したと言われるケースが少なくありません。内見予約で安心させておびき寄せる悪質な手口です。その中でも内見のスケジュールを合わせるために、わざわざ有給休暇を使って仕事を休み、不動産業者の店舗に出向いたケースでは、騙されたことによる被害が小さくありません。せっかくの有給を無駄にしてしまっただけでなく、来店する労力やコストもかかっています。
家賃が安いと思ったらおとり物件だった
周辺の物件よりも2割から3割も安い家賃だったので、内見予約をしたらおとり物件だったというケースがあります。新たに紹介された物件が相場よりも高くて内容的にも気に入らない物件だったという、笑えない結末でした。先のケースも含め、代替物件として紹介される物件こそが、不動産業者が契約をすすめたい物件です。おとり物件を使ってでも契約したい物件は、おとり広告で顧客を呼ばなければ契約に至らない物件とも言えるだけに、注意する必要があるでしょう。
大手のポータルサイトでもおとり物件が複数あって疑心暗鬼になる
大手のポータルサイトに掲載されている複数物件の問い合わせをしたところ、すべての部屋がおとり物件だったというケースがあります。来店すると「たったいま全部埋まってしまった」として、別の物件をすすめられたとのことですが、実際には掲載物件は空室ではなかったようです。騙された顧客の被害だけでなく、ポータルサイトへの信頼にもかかわる事態だと言えるでしょう。大手ポータルサイトに掲載されている物件の中におとり物件が紛れ込んでいる事実は、おとり物件の割合で示したとおりです。
おとり物件に騙されない方法
おとり物件に騙されないためには、前述したおとり物件の特徴を理解するとともに、提示されている情報を注意深く検討することが重要です。ここでは、おとり物件に騙されない方法を具体的に紹介します。
内見を現地集合にする
おとり物件の多くは内見予約は可能です。しかし、架空物件であったり居住中であったりで内見ができないため、現地集合ではなく来店を求められます。現地集合を希望して断られれば、おとり物件の可能性大です。そこで話を終わらせることによって、おとり物件に騙されるリスクを回避できます。現地集合を問題なく受け入れてもらえるなら、快適に内見できる可能性が高くなるでしょう。
家賃が不自然に安い理由を探る
相場よりも極端に安い家賃や、物件のレベルから考えて安過ぎると感じる場合は、理由を探ることが重要です。ストレートに質問しても良いでしょう。合理的だと理解できる回答が得られれば良いですが、そうでなければおとり物件だと判断して選択肢から外しましょう。
名称や住所が曖昧な物件は電話で問い合わせる
名称が記載されていない物件や所在地が途中までしか記載されていないからといって、それだけでおとり物件とは断定できません。気になる場合は電話で詳細を確認してみましょう。入居者を募集しているのであれば、個別の問い合わせに対して名称や住所を隠す必要がないどころか、成約にとって逆効果となります。明確な返事が得られなかったり、来店すれば教えると言われたりすれば、おとり物件の可能性が大です。仮におとり物件ではなかったとしても、疑問を感じる対応をされた不動産業者との取引は避けたほうが良いでしょう。
広告が1社しか見当たらない場合は他社に問い合わせてみる
ポータルサイトを見ていると、同じ物件を複数社が広告しているケースが珍しくありません。このような物件は、大家さんが複数の不動産業者に仲介を依頼できる一般媒介契約の物件です。その中で1社しか掲載していない物件が気になる場合は、他社に問い合わせることによって、おとり物件かどうかを判断できる可能性があります。
おとり物件は見つけたら通報しよう
おとり物件通報先
おとり物件を見つけたら迷わず通報しましょう。通報先は複数考えられます。まずは監督官庁・免許行政庁で、国土交通省または都道府県です。不動産業者が受けている宅地建物取引業の免許は、複数の都道府県で営業するための大臣免許と1つの都道府県内で営業する知事免許に分かれます。どちらの免許かは免許番号に書いてあるため、大臣免許なら国土交通省の、知事免許なら都道府県のそれぞれ担当部署が通報先といえます。ただし、個別のおとり物件、おとり広告に特化した通報方法は見当たらないため、電話などで事情を説明することになるでしょう。
そこで注目したいのが、消費者庁の「景品表示法違反被疑情報提供フォーム」です。前述のとおり、おとり物件を使ったおとり広告は宅地建物取引業法に違反するだけでなく、景品表示法にも違反する行為です。そこで、景品表示法を所管する消費者庁のフォームが活きてきます。その他には、おとり広告が掲載されているポータルサイトへの通報が考えられます。
通報に必要な要素
ここでは、景品表示法違反被疑情報提供フォームについて解説します。入力する内容のうち、必須となっているのは以下の項目です。
疑いがある事業者の名称
法人であれば株式会社○○などの名称を記載します。
提供情報の種類
不当表示と過大景品の2つから選んでチェックします。おとり広告は不当表示です。
不当表示の内容
おとり広告の内容を記します。
不当表示の内容は複数項目になっており、具体的には以下のとおりです。 ・表示媒体…ウェブサイトや折り込み広告など、どういった媒体に表示されていたか ・表示時期…いつ頃からいつ頃まで表示されていたか(おとり広告を見た日を忘れないようにしましょう) ・表示が行われた場所…具体的な地名やインターネット上など ・対象となる商品又はサービス…物件名など ・その表示内容…実際にどう表示されていたか ・表示から受けた印象…表示を見てどう思ったか ・実際にはどうか…実際とどう違ったか 通報者に関する項目もありますが、必須ではないため匿名での通報が可能です。
ポータルサイトに通報する場合、通報フォームを設けているサイトならフォームに記載します。通報を受けたポータルサイトの対応としては、事実確認や修正・削除などです。フォームに個人情報の記載が必須の場合でも、個人情報は開示しない旨の記載があれば安心できます。宅地建物取引業保証協会には全国宅地建物取引業保証協会と不動産保証協会があり、苦情対応が法定されています。通報者の個人情報が必須との決まりは見当たりませんので、匿名で通報してみるのも良いでしょう。
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